新年度がはじまった毎年目にするロボットのような若者紺のスーツに白いシャツ、臙脂のネクタイ、黒い靴黒のスカートスーツに白いシャツに黒いパンプス手には監理されているかのようなスマートフォン先輩と連れ立って歩く姿は緊張気味、通勤車内はスマホと対話構内ではスマホ片手にうつむき歩きでスマホ頼みの乗り口案内街中では片手にスマホ片手に傘、見るのは画面の道案内気にしなければ良いとは思いながらの何だか気になる雨の大手町4月になると「制服」のようなスーツ、前年までは「リクルートスーツ」そのものの歴史が気になり書店に急ぐ、スマホではなくアナログで「リクルートスーツ」という日本独自の慣行とされるその造語英語に当てはめると「interview suit」というらしいこれもまた日本独自の慣行とされる「就職協定」これによる採用確定とその就職活動時期の集中2018年まで「就活ルール」と名を変えて続いた紳士協定という名の「慣行」そもそも「慣行」という言葉も学問的な用語として確定しているとは言えないらしく…これがはじまった1970年代後半に持ち込まれた親からの相談「何を着せたら良いか?」この相談に対応を仕切れなくなった学校関係者が百貨店に相談こうして売り出された就職用スーツ「リクルート」という名のスーツ就職協定が確立されたことによって一斉に行う採用活動を生み出し、一斉に行なわれる就職活動を生み出しその服務規範も一律ではないかという憶測、推測、予測訪問する企業に幅広く通用する外見を知りたいという欲望こうしてはじまった「リクルートスーツ」そのはじまりは1977年9月とのこと昨今では服装による個性表現を推奨する傾向があり実際「個性的」な外見を目にすることが増えたのは事実ではあるものの当たり障りない服装でまとめるのは当然のことかとも思うそもそも就職活動の際の服務規範を問われたところで何も知らずにこれから社会に出ようとする若者にはわかるはずもなくやはり雇う側、相談される側、伝える側、売る側の責任は大きいと思う伝えたいことが山ほどあり、それを伝えたいと思いながらも大手の服飾に携わる企業の様に「間違いない服」を提案してしまうかもしれずこれが「常識的な服」として伝えてしまうかもしれず…「個性的」という言葉の意味や対義語に思い悩む今日この頃雨を避けた久しぶりのメトロ車内で耳にした会話「この次、どうする?」もちろんスマホに目をやりながら営業先か何かの相談と思える問いかけに「次?次はもっと給料が良いところかな」と、4月の会話に驚いた雨のメトロの大手町汚れたピンクの花弁張りつく東京で「向上心」の意味をも考える雨の4月の午後新しい春を迎えたみなさまへいろいろなことが起こる今もこれからも少しでもやさしい時間になりますようにDiana Krall, Nat King Cole などの名演数あれど今はこの人でA Blossom Fell / Sue Raney令和4年穀雨を迎える頃に酒番 栗岩稔参考文献/リクルートスーツの社会史/田中里尚著/青土社栗岩稔プロフィール鎌倉THE BANK、 銀座7丁目クロージングサロン、木挽町路地裏の酒場 bar sowhat、銀座5丁目 Ginza Sony Park Bar Morita で大人の集う酒場を作り上げ人と酒と酒場をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく唯一無二のフリーランスの酒番として活動中2021年夏よりパーソナリティを務める WAH! Radio www.wahradio.org でお耳にもかかれますようにWebサイト開設のお知らせ栗岩稔のSTYLEを人やモノを通して伝えるメディアとして https://www.kuriiwastyle.com/ がはじまりました少しずつですが栗岩稔のスタイルにご期待くださいこちらではお目にかかれますように
師というかオヤジというか、とても大きな存在の人の事務所の片付けに行った人一倍きれい好きで置くものの位置や置き方まですべて計算していたその人の事務所とは思えないほど散らかされていた言葉を失くし無言で片付けたそのすべてのものに見覚えがあったナポリで仕立てたジャケット、シャツ、ネクタイ、すべてが散らかされていた人とのつながりを大切にして、人一倍寂しがり屋だった人の大切な場所で他人の冷たさを感じるほど、とにかく散らかされていた書斎には愛蔵書、数々の手掛けた作品とその資料その傍らの棚には埃まみれのドレスシューズがあったモンクストラップ、ストレートチップ、ウイングチップ、スリップオンシューズ灰色の靴になっていた黒い靴にやるせなくなり、そのままかばんに預かった似たようなサイズだったことを思い出し、大切に履けることを願いながらしまったその夜ひとりラフロイグソーダを呑みながら、ラフロイグで靴を磨いた元通りの輝きを取り戻して安心したが、切なく酔ったあれから7年が過ぎたこの春、久しぶりの立ち仕事でその靴の意味を再認識したそれぞれのスタイルに合う靴、それぞれの場面で必要な靴それぞれの履き心地、それらを靴の底から体感した仕事先に歩く時、室内にいる時、一歩踏み出す時すべて足の裏から何かを伝えている靴地に足が着いているかどうかを問われるようにフィレンツェの石畳を意気揚々とイタリア靴で歩いた若い頃に靴底から感じたあの靴の意味以上の生き方すべてのスタイルを感じる靴の意味を銀座の端っこで足の裏で感じたその仕事を終えた夜ラフロイグで磨き、ラフロイグソーダを呑んだ酒のこと、音楽のこと、服のこと、旅のこと、すべてのスタイルを体現し、伝えてくれた時間がかかり過ぎたものの今さらながら感謝し心地よく酔ったその人のことを思うと必ずマンハッタンを思い出す30年近く前は出張で訪れることが多かった、ニューヨーク州マンハッタン仕事の合間に訪れた5番街の百貨店でスーツのセールに遭遇する小さい日本人には揃ったすべてのサイズに買う気満々の品定め皺だらけのカジュアルシャツ、プレスされていないチノパンに汚れたデッキシューズの若者目に入らないかと思うほどに目もくれず、声もかけない老齢の専門スタッフ翌日、プレスの効いたボタンダウンシャツにグレーのパンツに磨いたリボンタッセルで再チャレンジ「日本からかい?昨日もいたね」と同じ専門スタッフ「このスーツが良いかな、いつ帰る?それとも住んでるのかい?」「明後日の朝一番のフライトです」「そうか、わかった、明日来れるかい?」と特別のフィッティングルームに案内され最上のサービスで紺無地のスーツを買った今では着ることすら出来ないものの大切な記憶になった街での出来事ある映画の中でアメリカの片田舎からマンハッタンに向かう孫か息子に「困ったことがあって誰かに尋ねることがあったら、その人の靴を見て判断しなさい」という老人のセリフも思い出すマンハッタンには350回行ったと嘯くこともあったその人詳細に街のことを教わり30代初めは年に2回ずつ訪れたマンハッタン紹介されて、会う人、行く店、行く酒場、すべてが糧になっているこのことは間違いない生き方というか、そのスタイルを体現してくれたその人木挽町の小さな酒場に突然現れ話し込んだたくさんのことの中で「ギター弾きの面白い若いのがいるから聴いてやってくれるか」と託されてから10年を越えたその「若いの」が作った曲を今ここで命日が近づく頃にSTYLE https://youtu.be/MoW6biLcsgM を令和4年春分の日の前に酒番 栗岩稔栗岩稔プロフィール鎌倉THE BANK、 銀座7丁目クロージングサロン、木挽町路地裏の酒場 bar sowhat、銀座5丁目 Ginza Sony Park Bar Morita で大人の集う酒場を作り上げ人と酒と酒場をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく唯一無二のフリーランスの酒番として活動中2021年夏よりパーソナリティを務める WAH! Radio www.wahradio.org でお耳にもかかれますようにWebサイト開設のお知らせ栗岩稔のSTYLEを人やモノを通して伝えるメディアとして https://www.kuriiwastyle.com/ がはじまりました少しずつですが栗岩稔のスタイルにご期待くださいこちらではお目にかかれますように
友人の結婚式の席に招かれた今までは酒場の主たる者は表舞台に出ることなく黒衣に徹するべきと思っていただから出席することはなかったあの路地裏での数年間特に世界中の人々が距離を保ち声を潜めるようにしていた数年間少しだけ距離の感覚が変わった招いてくれた友人はいつも酒場にいてくれた多岐に渡る深い会話、酒の知識世界的な視点とその言語、そして同郷たくさん話をした小さな小さな酒場から大きな大きな世界が広がった自身に課しているお客様との距離感とても大切にしているこの感覚この頃から少しだけ近くなった俗に言う「価値観」が少しだけ変わったその酒場を昨年春に幕を閉じたまたその距離が遠くなったそんな時に祝いの大切な「ハレ」の席に招かれた故郷の古い言葉で「およばれした」縁がつながっていることに感謝したその祝いの場にも思い入れが深かった昭和3年設立の会員制社交クラブ若かりし頃、数回連れていっていただいたその場には憧れの時間が流れていた江戸時代の古地図にもある大名屋敷が立ち並ぶ狸穴坂時代の流れと世の中の流れとともに場所を変えながらあり続け旧尾張藩主の大名屋敷跡に落ち着いたそのクラブのバンケットホール自然光を採り入れ、天井が高く開放的な空間に余計な装飾はなく最低限に必要な色彩とスタッフの心地好い対応に彩られたその時間案内されたテーブルに恐縮したその位置に座りそこに居ることの意味を考えたここに居る自身の装い、礼を以ている服装かどうか、振る舞いはどうか背筋が心地好く伸びたこの席に居ることを客観的に見ながら心地好い時を過ごした常に姿勢を正し、襟を正し、酒場の主が失礼のないようにとても美味しく酒をいただいた酒場で毎週響いていたギターの音色がホール全体に響いたとても心が震えた初めて感動したそして色々なことに感謝した酒場の意義、流れる時間、そこに居るということそこにあるということ酒場の奥深さを再認識しあの10年間に改めて感謝した酒場でことある毎に選曲し流していた楽曲二人の顔が揃うと選ぶことが多かった楽曲二人の大切な共同作業の場面で選ばれた楽曲今一度ここで聴きたい、聴いてもらいたい、残したいThe Miseducation of Lauryn Hill より Can't Take My Eyes Off Of You を世界平和を声高らかに唱えるつもりは毛頭ないし出来ないただ、やさしい時間を体感した今この時間を振り返りやはりこういう時間は必要だと強く感じた人と人が顔を会わせ、酒を酌み交わす和やかな時間、笑顔溢れるやさしい時間世界中に分け隔てなく少しでもやさしい時間が流れますように酒の席が美しい時間でありますように醜い時間になりませんように令和4年大寒を迎える佳き日に酒番 栗岩稔栗岩稔プロフィール「鎌倉THE BANK」「 銀座7丁目」「木挽町 bar sowhat」「銀座Sony Park Bar Morita」で大人の集う酒場を作り上げ「人」と「酒」と「酒場」をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく唯一無二、フリーランスの「酒番」として活動中2021年夏よりWAH!radioパーソナリティ開局1周年を迎えた WAH! Radio www.wahradio.org にてお耳にかかれますように
映画「アンタッチャブル」を観た何回も観ている映画ではあるものの最後まで観た年齢を重ねるたびに見どころ満載な点に改めて気づいた禁酒法時代のアメリカ腐敗と汚職にまみれた行政と警官とアル・カポネに支配された街シカゴこの街に派遣された財務省の役人が味方の見えない中で悪というものに挑んでいく物語主役級のスタイリング全般はジョルジオ・アルマーニが担当財務省の役人として主役を務めるケビン・コスナー正義を貫くがために出世が断たれたベテラン警官ショーン・コネリー教科書通りの言動にはまらないため新人警官ながら仲間に抜擢されるアンディ・ガルシア禁酒法時代に暗躍した実在のマフィアのボス役としてロバート・デニーロこのキャスティングだけでもおなか一杯な感があるもののそのスタイリングの良さに改めて気づく
ケビン・コスナーの役人らしいスリーピーススーツスタイル元来スーツというものは三つ揃えではじめてスーツと成すとか警官として活動の幅が広いアンディ・ガルシアのドレスダウンスタイルクライマックスを迎える法廷シーン勝訴を確信して笑みさえ浮かべるロバート・デニーロのブラックスーツスタイル転じて有罪が確定する場面での白に近いライトグレイのスーツと黒のソリッドタイそれぞれに深い意味を持たせたながら美しくスタイリングされた数々の場面しかし、ショーン・コネリーだけは自前の衣装だったらしい摘発のための仲間に誘われケビン・スナーに会いに行く場面のジャケット国境をまたいだ密輸を摘発に向かうシーンのニットとブーツ(このシーンは誰も彼ものスタイリングが素晴らしいので必見かと、とくに乗馬シーン…)すべてに被る帽子の数々
そういえばある男が口止めのための賄賂をもってオフィスに訪れるシーンその男は帽子も取らずートも脱がず、反対に迎える彼は上着を着ようともする英国的には男が室内で帽子を取るのは敵意がない証拠を表すものらしいが
ギャング仲間の会食シーンアル・カポネの話が終えるまで待つ男たちひとり葉巻に火をつけて煙をまき散らす男の裏切りと敵対心を象徴密売酒の摘発に成功した夜の会食シーン各々が同じ葉巻をそれぞれに持ち一緒に火をつける祝いの葉巻細部にわたり演出が施された興味深い内容は男の作法的なものを学ぶ良い教材のひとつかとそういえばこの映画で脚光を浴びたアンディ・ガルシアの暑苦しいほどの眼光他にもブラックレインでの警官役、ゴッドファーザーⅢでの時期マフィアのボス、オーシャンズシリーズなど日本国内で話題になった映画だけを観ても両極端な配役はその眼光からかもルールとモラル、行政と市民、腐敗と汚職、正義と悪、そして家族勧善懲悪と言い切ることが出来ない様々な要素があることに改めて気づかされる映画「UNTOUCHABLE」そのタイトルにすらセリフに留まらない深い意味があるような、ないような映画の最後に脱税容疑のみの有罪で懲役刑を確定させ喜びにあふれる役人新聞記者からの禁酒法自体廃止になったことをあわせた質問にひと言「大いに飲むよ」時代と場所と場面を置き換えて考えてみることもしたくなる今日この頃
美しく秋深まる夜更けにCannonball Aderley/Somethin'ElseよりAutumn Leavesでも聴きながら禁酒法の時代に生まれたノンアルコールカクテル「フロリダ」でもいかがかと令和3年10月吉日
酒番 栗岩稔
「鎌倉THE BANK」「 銀座7丁目サローネ」「木挽町 bar sowhat」「銀座Sony Park Bar Morita」で大人の集う酒場を作り上げ、「人」と「酒」と「酒場」をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく。唯一無二、フリーランスの「酒番」として活動。
2021年夏よりWAH!radioパーソナリティ○Ginza Sony Park https://www.ginzasonypark.jp/○WAH! Radio https://wahradio.org/
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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと
銀座の公園で骨董市を見た元来、古い物に興味を持っていなかったが20年前に出会った先輩方の影響で好きになり、学んだその骨董市には当時出会い同じ目線で影響を受け年を重ねた男たちがそれぞれに軒を並べてそこにいた皆が格好良かった、とても自身も好きなことに絞って生きてきた、ように思う酒場、音楽、映画、本に服、そして美しいモノ好きなことや気に入ったモノに囲まれていれば厭なこと、苦しいこと、嫌いなこと、怖いこと何があっても苦にならない、と思うただただ、好きなことやモノだけを集めただけではダメだとも思う足を運びそのモノを見極める眼、感じる手、知識手中の電子機器から投げつけられる情報だけではわかるはずもなくその手触り、手心地、カタチ真面目に向き合い対峙したその瞬間にはじめて得られるそのモノとその意味感じられる美と愛おしさそれはモノでも音でも画でも文字でも同じかともしかしたら人も、かも人もモノも、そのご縁は大切に咄嗟に思い立って映画を観た「トラップ・ファミリー合唱団物語」を原作としたドイツ映画「菩提樹」それを原作として、ロジャース&ハマースタインのコンビでニューヨーク・ブロードウェイでミュージカル化された「サウンドオブミュージック」そのミュージカルをさらに同名で映画化「サウンドオブミュージック」1938年、ナチスの侵略迫るオーストリア厳格なトラップ家のもとへと修道院長の命を受けて家庭教師としてやって来た自由奔放な修道女マリアその温かい人柄と音楽を用いた教育で心を閉ざし教えを守る子供たちが心を開き合唱団を作るまでになる映画その中ではじめて子供たちと打ち解けるシーン夜の嵐を怖がる子供たちと好きなものを思い浮かべ共に唄う「My FabouriteThings」その後さまざまな時代の波に翻弄されるトラップ家の人々戦時中のオーストリアの情勢が色濃く描かれた「サウンドオブミュージック」をその後のトラップ家の行く末を知りたい方は「菩提樹」を是非ご覧あれもちろん、原作「トラップ・ファミリー合唱団物語」もご一読を骨董市を終えたその夜銀座の公園の酒場で再会したその場にふさわしい器をかわす男たち皆が良い顔をしていた今宵、秋雨の気配を感じる夜にSarah Vaughen/After Hours より My Favorite Things を令和3年9月吉日酒番 栗岩稔
プロフィール : 木挽町路地裏の伝説の名店 bar sowhat を終え、新たなステージで日々、人と酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。2021年夏よりインターネットラジオ局 WAH! Radio にて番組パーソナリティーとして参加するなど多岐にわたり活動。現在は、銀座ソニーパーク地下4階で期間限定のBar Moritaにて酒番を務める。○Ginza Sony Park https://www.ginzasonypark.jp/○WAH! Radio https://wahradio.org/
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