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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第12回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第12回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと映画「アンタッチャブル」を観た何回も観ている映画ではあるものの最後まで観た年齢を重ねるたびに見どころ満載な点に改めて気づいた禁酒法時代のアメリカ腐敗と汚職にまみれた行政と警官とアル・カポネに支配された街シカゴこの街に派遣された財務省の役人が味方の見えない中で悪というものに挑んでいく物語主役級のスタイリング全般はジョルジオ・アルマーニが担当財務省の役人として主役を務めるケビン・コスナー正義を貫くがために出世が断たれたベテラン警官ショーン・コネリー教科書通りの言動にはまらないため新人警官ながら仲間に抜擢されるアンディ・ガルシア禁酒法時代に暗躍した実在のマフィアのボス役としてロバート・デニーロこのキャスティングだけでもおなか一杯な感があるもののそのスタイリングの良さに改めて気づく ケビン・コスナーの役人らしいスリーピーススーツスタイル元来スーツというものは三つ揃えではじめてスーツと成すとか警官として活動の幅が広いアンディ・ガルシアのドレスダウンスタイルクライマックスを迎える法廷シーン勝訴を確信して笑みさえ浮かべるロバート・デニーロのブラックスーツスタイル転じて有罪が確定する場面での白に近いライトグレイのスーツと黒のソリッドタイそれぞれに深い意味を持たせたながら美しくスタイリングされた数々の場面しかし、ショーン・コネリーだけは自前の衣装だったらしい摘発のための仲間に誘われケビン・スナーに会いに行く場面のジャケット国境をまたいだ密輸を摘発に向かうシーンのニットとブーツ(このシーンは誰も彼ものスタイリングが素晴らしいので必見かと、とくに乗馬シーン…)すべてに被る帽子の数々 そういえばある男が口止めのための賄賂をもってオフィスに訪れるシーンその男は帽子も取らずートも脱がず、反対に迎える彼は上着を着ようともする英国的には男が室内で帽子を取るのは敵意がない証拠を表すものらしいが ギャング仲間の会食シーンアル・カポネの話が終えるまで待つ男たちひとり葉巻に火をつけて煙をまき散らす男の裏切りと敵対心を象徴密売酒の摘発に成功した夜の会食シーン各々が同じ葉巻をそれぞれに持ち一緒に火をつける祝いの葉巻細部にわたり演出が施された興味深い内容は男の作法的なものを学ぶ良い教材のひとつかとそういえばこの映画で脚光を浴びたアンディ・ガルシアの暑苦しいほどの眼光他にもブラックレインでの警官役、ゴッドファーザーⅢでの時期マフィアのボス、オーシャンズシリーズなど日本国内で話題になった映画だけを観ても両極端な配役はその眼光からかもルールとモラル、行政と市民、腐敗と汚職、正義と悪、そして家族勧善懲悪と言い切ることが出来ない様々な要素があることに改めて気づかされる映画「UNTOUCHABLE」そのタイトルにすらセリフに留まらない深い意味があるような、ないような映画の最後に脱税容疑のみの有罪で懲役刑を確定させ喜びにあふれる役人新聞記者からの禁酒法自体廃止になったことをあわせた質問にひと言「大いに飲むよ」時代と場所と場面を置き換えて考えてみることもしたくなる今日この頃 美しく秋深まる夜更けにCannonball Aderley/Somethin'ElseよりAutumn Leavesでも聴きながら禁酒法の時代に生まれたノンアルコールカクテル「フロリダ」でもいかがかと令和3年10月吉日酒番 栗岩稔 栗岩稔プロフィール 「鎌倉THE BANK」「 銀座7丁目サローネ」「木挽町 bar sowhat」「銀座Sony Park Bar Morita」で大人の集う酒場を作り上げ、「人」と「酒」と「酒場」をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく。唯一無二、フリーランスの「酒番」として活動。 2021年夏よりWAH!radioパーソナリティ○Ginza Sony Park https://www.ginzasonypark.jp/○WAH! Radio https://wahradio.org/ 栗岩稔  FACEBOOK 〇お知らせ 6月中旬よりインターネットラジオ局 WAH ! RadioにてJazを中心として映画や本、旅など多岐にわたり、 選曲家で音楽ライター 大塚広子、垣畑真由の二人と語るカルチャー番組がオンエア中 ぜひお耳にかかれますように。 WAH! Radio www.wahradio.org...

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『酒番日記』イベント「誂え服と昭和のハイボール、その時代」開催のお知らせ

『酒番日記』イベント「誂え服と昭和のハイボール、その時代」開催のお知らせ

1960年代高度成長期を迎えた昭和 過度に達するまでのその時代 現在のように多種多様のウイスキーがないころの酒場 ウイスキーをより旨く、香り高く味わうためのウイスキー&ソーダ 勝手に命名「昭和のハイボール」 大量生産大量消費の時代 既製のモノを買い、使い捨て、葬り去る その忘れ去られた、ひとりひとりのために誂えるということの意義 銀座のオーダークロージングサロン「The Cloakroom Tokyo」にて語り合えたら幸いです。 「誂え服と昭和のハイボール、その時代」 日時:10月17日日曜日午後3時より午後5時まで 参加費:5000円(税込) 10名限定 ※未成年者不可※感染防止対策徹底の上開催 参加申込、お問い合わせはメールにて承ります info@thecloakroom.jp 以上、お目にかかれましたら幸いです。栗岩稔追伸、酒もまたひとつひとつ誂えるものだと、思う。型どおりではなくて。 酒番 栗岩稔 プロフィール : 木挽町路地裏の伝説の名店 bar sowhat を終え、新たなステージで日々、人と酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。2021年夏よりインターネットラジオ局 WAH! Radio にて番組パーソナリティーとして参加するなど多岐にわたり活動。現在は、銀座ソニーパーク地下4階で期間限定のBar Moritaにて酒番を務める。○Ginza Sony...

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第11回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第11回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 銀座の公園で骨董市を見た元来、古い物に興味を持っていなかったが20年前に出会った先輩方の影響で好きになり、学んだその骨董市には当時出会い同じ目線で影響を受け年を重ねた男たちがそれぞれに軒を並べてそこにいた皆が格好良かった、とても自身も好きなことに絞って生きてきた、ように思う酒場、音楽、映画、本に服、そして美しいモノ好きなことや気に入ったモノに囲まれていれば厭なこと、苦しいこと、嫌いなこと、怖いこと何があっても苦にならない、と思うただただ、好きなことやモノだけを集めただけではダメだとも思う足を運びそのモノを見極める眼、感じる手、知識手中の電子機器から投げつけられる情報だけではわかるはずもなくその手触り、手心地、カタチ真面目に向き合い対峙したその瞬間にはじめて得られるそのモノとその意味感じられる美と愛おしさそれはモノでも音でも画でも文字でも同じかともしかしたら人も、かも人もモノも、そのご縁は大切に咄嗟に思い立って映画を観た「トラップ・ファミリー合唱団物語」を原作としたドイツ映画「菩提樹」それを原作として、ロジャース&ハマースタインのコンビでニューヨーク・ブロードウェイでミュージカル化された「サウンドオブミュージック」そのミュージカルをさらに同名で映画化「サウンドオブミュージック」1938年、ナチスの侵略迫るオーストリア厳格なトラップ家のもとへと修道院長の命を受けて家庭教師としてやって来た自由奔放な修道女マリアその温かい人柄と音楽を用いた教育で心を閉ざし教えを守る子供たちが心を開き合唱団を作るまでになる映画その中ではじめて子供たちと打ち解けるシーン夜の嵐を怖がる子供たちと好きなものを思い浮かべ共に唄う「My FabouriteThings」その後さまざまな時代の波に翻弄されるトラップ家の人々戦時中のオーストリアの情勢が色濃く描かれた「サウンドオブミュージック」をその後のトラップ家の行く末を知りたい方は「菩提樹」を是非ご覧あれもちろん、原作「トラップ・ファミリー合唱団物語」もご一読を骨董市を終えたその夜銀座の公園の酒場で再会したその場にふさわしい器をかわす男たち皆が良い顔をしていた今宵、秋雨の気配を感じる夜にSarah Vaughen/After Hours より My Favorite Things を令和3年9月吉日酒番 栗岩稔 プロフィール : 木挽町路地裏の伝説の名店 bar sowhat を終え、新たなステージで日々、人と酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。2021年夏よりインターネットラジオ局 WAH! Radio にて番組パーソナリティーとして参加するなど多岐にわたり活動。現在は、銀座ソニーパーク地下4階で期間限定のBar Moritaにて酒番を務める。○Ginza Sony Park https://www.ginzasonypark.jp/○WAH! Radio https://wahradio.org/

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第10回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第10回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと    「炎のランナー」を観た 邦題は「炎のランナー」原題は「Chariots of Fire」 ウイリアム・ブレイクの序詩からの抜粋で 旧約聖書のなかの「炎の戦車に乗り地上を見下ろす」からの一節とのこと 若い時に観たスポーツの感動の映画とは違った何かを感じる イギリス権威主義、階級意識、民族意識、宗教観など、たくさんの要素を   熱心な布教活動を行うスコットランドのリデル、金融で財を成した一族出身のユダヤ人ハロルド 二人の100メートル走をめぐる戦い、大英帝国の代表としてオリンピックに出場する実話をもとに 描かれているものの、民族的な偏見や差別を色濃く描いている部分を見直すことが出来る   リデルが剛健なキリスト教という訳でセリフにも読み取れるスポーツを通して体現する布教活動を終え 帰国した彼のもとに集まる子供たちとラグビー選手としてもヒーローの彼が走る姿 シャツのカラーを外し、ツイードの上着を脱ぎ、子供たちはツイードの上下で半ズボン   場面が変わってロンドン ケンブリッジ大学への入寮を控えたハロルド 戦後のロンドン市内で明らかに階級の違う男たちに荷物を運ばせ、タクシーで向かう その大学構内でのスクールカラー、ニット、マフラー、帽子など細部にわたる服装で表現する時代 ツイード生地、クレリックシャツ、スクールカラー、シャツ、ニット、帽子本来の意味を知る上でも必見かと   セレモニーを終えたハロルドがチャレンジする伝統行事 上質のコートを羽織り同走を申し出る貴族階級の男性の手にはシャンパン、片方の手には葉巻 一方のハロルドは下着のようなランニングウエア   二人を上から見つめる学長らしき人物のセリフ「金融の一族出身で云々」これだけでも計り知れない...

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第9回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第9回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと   久しぶりの酒場にて またしても自身の過去を否が応でも振り返る 人生初のBARのこと、東京という大都会でのBARのこと   進学して間もない上京して3か月という若者二人がカウンターに座る 小さな声で 「ノンアルコールでお願いします」 思わず 「えっ?」という返事にさらに小さく 「僕らまだ19歳なんです」 見るからに緊張した面持ちの中の瞳を輝かせながらカウンターの端に座り 背伸びしたい丸まった背中の二人の前には 苦みと甘みのバランスが程よいカクテル「シャーリーテンプル」   真っ白で清潔感の溢れるシャツの襟を正しながらカウンターにたどり着くひとりの若者 「初めてなんです、どのように注文したら良いですか?」 聞けば23歳にして興味津々のBAR初体験の一杯は 日本生まれで世界発信したカクテル「バンブー」を少しだけ飲みやすく   少し前に23歳だった男性が距離の保たれた隣の席に座る 彼自身の路地裏の小さな酒場の体験を静かに語る彼の前には いつものお気に入りのカクテル「モスコミュール」 路地裏の酒場の3倍の長さがあるカウンターの端でグラスを磨きながら 心の中では「ありがとう」   丸い小さな灯りに引き寄せられた故郷の町の路地裏の懐かしく切ない記憶がよみがえる 重そうな扉に閉ざされたBARの文字 勇気を振り絞って押した先に広がる大人たちの空間 その気配に圧倒されながら戸惑い立ち止まる 偶然か必然かカウンターの端の一つだけの空席...

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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第8回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第8回

1989年6月 渋谷スクランブル交差点 交差するたくさんの人波に3回やり過ごす信号 初めての東京渋谷 初めての人々との初めての仕事 今にも逃げ帰りたい日々を救ってくれたのは 街の至るところにある公園   整然と並ばされた木々の新緑が揺れる風の公園 コンクリート堤防を流れる川がたゆたう水の公園 波の立たない作られた海浜の暑すぎる砂の公園 運ばれてきた土と作られた木で出来たベンチが濡れる雨の公園 煙りが漂い大人が潜む子供のいない児童遊園   都会だからこその公園、街中の広場 行き場のない人や休息を求める人々が集う公の居場所、留まっていられる自由な場所   そもそも明治維新の熱冷めやらぬ江戸から東京へと変貌していくさなか 明治6年に布告された法律に基づく公園制度によるとか そのころの文言には「都市の肺臓」たるべし衛星環境のための公共の広場が云々とか PARKなのか GARDENなのか PUBRIC SPASEなのかはさておき公の広場として 地方大名江戸屋敷の広大な敷地跡や寺社の持ち物の土地を借り受けて整備したとか   2021年6月 数寄屋橋スクランブル交差点 誰よりも前で、誰よりも早くわたりきり、陽光きらめく日比谷公園に向かう 明治36年完成のこの公園 東京初の公共図書館、東京で初めてフランス料理を提供したレストラン、東京で初めての結婚式場 一般民衆がはじめて耳にする西洋音楽の舞台  ...

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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第7回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第7回

晩春に初夏の光射し込む大都会の片隅の喫茶店  平積みされた濫読中の本と香り立つジャーマンローストコーヒー  大好きなコーヒーの香りで思い出す    海辺の町の酒場の頃  選曲されて流れ出る曲と酒を楽しむひとりの女性  いつものように頭の中に流れる音楽が次々に流れ出すその時間  その曲が流れたその瞬間、ふとうつむきハンカチを取り出すその女性  時間は弛まず流れ続けるその酒場  帰り際にひと言「ありがとう、また」と美しい笑顔のその女性  あえてここに曲名は書かない、その理由は今でもわからない    海辺の町を立ち去るその日  自身と同い年の喫茶店で最後のジャーマーローストコーヒーをいただく  その旨さ記憶に刻み席を立つ  普段は口数少なくロボットのような動きで忙しい店内を取り仕切る店長がひと言  「前から思っていたんだけど、歩き方がJazzですよね」  「え、そうですか」  「そうですよ」  「10代の終わりからJazzばかり聴いていたからですかね」  「そうですよ、きっと」    海辺の町のプラットホーム  Jazzな歩き方って、今でも答えはわからない    高校2年の思い悩むある日  地元のレコード店に立ち寄る、いつもの書店と違うその日  ふと見つけたタイトルと美しいモノクロ写真のCDジャケット  「As Time...

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第6回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第6回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと街中に教えられた通りのスーツに着られ、スマホ片手に言われた通りのカバンを持った若者を目にする頃散り急ぐ桜の花と咲き急ぐ藤の花の下、ふと吉田健一著「酒談義」(中公文庫)の一説を思い出す。犬が寒風を除けて日向ぼっこをしているのを見ると、酒を飲んでいる時の境地というものに就て考えさせられる。そういう風にぼんやりした気持が酒を飲むのにいいので、自棄酒などというのは、酒を飲む趣旨から言えば下の下に属するものである。頭でっかちな酒の飲み方で、早く酔いたい一心でいれば、体の他の部分が承知しないから、それまでのむしゃくしゃした気持が悪酔いの不愉快な状態に変るだけである。むしゃくしゃしているのなら、面と向ってその気持なり、その気持の原因なり何なりを見詰めた方が男らしいように思える。尤も、酒を飲めばそれが一層よく出来るというのなら別で。それならばそれは自棄酒の部類に入らない。(本文より抜粋)35 年前人生はじめての自棄酒というものにやられた。自棄の理由は若気の至りのフラれた男子。人生はじめての二日酔い。人生はじめての大ケガがもとの、人生はじめてのヒゲ。記憶にあるのは転がった道路から見上げたきれいな春の夜空。そういえば今朝の新聞文化欄「飲みニケーション」どこへ行く、という記事を見た。「飲み二ケーション」は日本型社会の美点とさえいわれたが、そっぽを向く若者も増えている。「飲み会」は、どこから来てどこへ向かうのか、とはじまる文面。(朝日新聞文化欄より抜粋)35 年前の自棄酒以来、独り酒が多く自身も「飲み二ケーション」とやらは不得手であった。それでも、酒席での大切なコミュニケーションはとれていたと思うが…。民俗学者柳田国男著「明治大正史世相篇」(平凡社)の中で、独酌はたしかに又明治大正時代の発達であった。元来は酒は集飲を条件として起ったもので、今一つ以前は神と人と、共に一つの甕のものに酔ふという点が、面白さの源を為して居たのである、ともある。(本文より抜粋)酒で失敗した男の映画は数あれど、吉田健一著「酒談義」(中公文庫)、柳田国男著「明治大正史世相篇」(平凡社)をご一読あれ。今日はとっても演歌な気分、吉幾三「酒よ」でも。明治大正昭和平成令和、酒は何処へ向かうのか、などと大それたことを一考する日向ぼっこの桜のベンチ。手にしたコップに花弁一枚落ちてきた、今日もやっぱり独り酒。令和3 年4 月吉日酒番栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏bar sowhat を終え、新たなステージで日々人に向かい酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオ局にて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動

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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第5回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第5回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと三寒四温という美しい言葉が似合いのこの頃、改めて酒場について考える映画「ゴッドファーザーpartII」のなかで裏切った仲間を暗殺する場として選ばれたのは開店前の薄暗い酒場店の主人がグラスを磨き、明かりのない店内で外光とグラスの輝きだけが象徴的なワンシーンデイビット・リンチ監督作品「ストレイト・ストーリー」の美しいラストシーンにむかうひとコマ戦後酒を断っていた70代後半の主人公と10年来、ささいな口論がもとで断絶していたその兄病に倒れた兄の元へ自分が唯一行くことができる手段「トラクター」で500km以上旅をするひたすらまっすぐに旅を続け、兄の所在がようやく明らかになり、旅の終わりの見えた安心感と喉の渇きを潤す町外れの酒場でアメリカ製の瓶ビールを旨そうに飲む主人公「もう一本いくか?」「いや、これでもう十分」年の頃が似通った二人が交わす最低限の必要な会話の後、場面が変わりエンディングへと向かう映画もさることながら、ラジオでも酒場を舞台設定にした番組が多数、日本歌謡の名曲「酒場にて」数え上げたら切りがない酒場の場面とその景色少しだけ日が伸びた夕暮れの街を歩く明かりのつかない酒場を眺めながら、30年前のマスターの言葉を思い出す「酒場の明かりはね、消したらダメなんですよ。行きたいと思った時に必ず開いていないと寂しいでしょ必ず開いていて明かりが灯っていて出迎えてくれる酒場じゃなきゃ…。」長い長い高架下の商業施設、明かりが消えた店舗の中少しだけ明かりが洩れる入り口の休業の貼り紙に肩を落とし立ち去る時に感じる人の気配カウンターの明かりを灯し、グラスを磨き酒瓶を磨く店の関係者に少しだけの安心感と再来を決意そういえば「バーテンダーの仕事って何ですか?」という質問に「バーテンダーはね、掃除ですよ、掃除…。」そんな誰かの言葉も思い出す。この春、片付けを終えた何もない酒場に残るドライフラワーは知らずに訪れた人への感謝と詫びの標最後に花束を贈ってくれた、普段より少しだけドレスアップした男性とシックな色合いの美しい女性「今日はここにあいさつに来るからやっぱりスリーピースでなきゃ」と会話を交わす紺と白のコーディネーションが美しい40代の男性必ずジャケットを羽織り、一杯しか飲めなかった酒がいつしか二杯飲むようになった20代初めの男性もいまでは30代目前「生存確認だからな」と言ってジントニック、時にはマティーニを一杯だけ飲んで帰る70代後半の男性たくさんの美しい景色に彩られた酒場の時間鍵を渡し、明かりを落とし、町に別れを告げるその手にはホウキと雑巾最後の曲はやっぱり、Miles Davis/Kind of Blueより「So What」夕暮れから夜にむかう、大好きなすき間の時間今日も必ず開いている、外光射し込む酒場にて、30年来の仲間のもとで、ビールを一杯だけ令和3年3月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏bar sowhat を終え、新たなステージで日々人に向かい酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオ局にて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動

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『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第4回

『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第4回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと春の声が聞こえてくる街を足早に急ぐ保険関係らしき4人の男前列左、手ぶらで歩く一番の上司、前列右、真顔で早口に説明をするその部下後列左、スマホを眺めるその部下、後列右、笑いながら話をするそのまた部下先頭左、紺のスーツに不自然な硬さに見える白いシャツ、紺ストライプのネクタイ不自然に光る皮革のような黒い靴先頭右、紺のスーツにヨレヨレの白いシャツ、弛んだ紺のネクタイ、黒のスニーカー後列左、少し明るめの紺色で寸足らずのスーツにブルーのシャツに青いネクタイ磨かれていない黒の革靴、裾から覗く黄色い靴下後列右、ヨレヨレの紺のスーツにブルーのシャツに喉仏が見えるほど弛んだネクタイ踵が斜めに削れた色あせた茶色の靴春の光あふれる午前8時にふと想う否定はしないが、何かが違う、大丈夫かな、日本人15年以上前、まだ寒い2月のロンドンの街角のとある商談の場紺無地スリーピーススーツにサックスブルーのシャツ、紺無地のネクタイの日本人仕立ての良い紺無地のスーツに白いシャツ、弛むことのない紺無地のネクタイ磨き上げられた黒いビジネスシューズの英国人男性和やかに時間が流れ商談が終わる紺無地のチェスターコートを手に持ち、レザーグローブを左に右手で握手微笑みながら英国人のひと言「ところで、なぜ今日はエドワードグリーンの茶色のタウンシューズなんだい?」しばしの絶句の後のひと言「申し訳ない…」気の利いたジョークを返すことなく、日本人得意の作り笑いで取り繕い夕暮れ迫り寒さ沁み入る街を向かった先は少しだけなじみの小さなパブ商談の成功と自身の反省に、ビールがすすむロンドンの日本人そういえば以前観た映画の中で地方から大都市に引っ越す孫に言う祖母のセリフ「何か困ったことがあったらその人の靴を見て判断なさい」タイトルも年代も忘れた映画のセリフを思い出す春色膨らむ街角で頭の中に流るるは「Thelonius Monk/Solo Monk」よりThese Foolish Things (Remid Me of You)やっぱりジャズ…令和3年2月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏 bar sowhat 店主として日々人に向かい、酒を通して時間を提供する。ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から、事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオにて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動。

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『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第3回

『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第3回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと寒さ深まる初春の午後、ヴィンテージのZIPPOオイルライターで火をつけるタバコ吸いの肩身が狭い今日この頃の路地裏の片隅でそういえばこのライター、リーヴァイス501の腰ポケットにピッタリ収まるサイズと面取りされた無骨過ぎない形がお気に入りだった若い頃無類のコーヒー好き、おまけにナポリタンスパゲッティにも目がなくランチセットなどの看板が出ていたら迷わず飛び込む喫茶店自分の好みとあれば、いつもの曜日にいつもの席にいつもの時間でいつものメニュー少しでも認識してもらえるかもしれない小さな小さな作戦計画その日もいつものようにいつもの席に座る店のホール担当の女性が水を置きながら 「いつもの?」「はい、お願いします」あいさつ以外のたったひとつの会話少しのハムとマッシュルーム、ピーマンスライスの緑が効いたナポリタンスパゲッティ食べ終わるころに運ばれて来る、強めの焙煎の豆をサイフォンで入れたブレンドコーヒーそして至福の一服飛び散ることのない灰と吸い殻がきれいに分かれた灰皿とコップを残して席を立つ東京渋谷への転勤が決まり、出発日のランチに迷わずいつもの席でこの日だけは一本多いタバコの吸い殻を残して席を立ついつもはさりげなく流れる店内の音楽のヴォリュームが一段上がる当時大流行したプリンセス・プリンセスの「M」に足を止める「ありがとうございます」「いってらっしゃい」ひとこと多いその日の会話あれから30年以上が過ぎた今宵、いつものバーのいつもの席でいつもの酒手には小さめの葉巻と専用ガスライター、カウンターにきれいな灰皿とグラスがひとつ大切な少しの時間と積み重ねて来た大切なたくさんの時間葉巻と白い灰がきれいに並びグラスが空になりかけた頃デューク・エリントンとジョン・コルトレーンの名演「In A Sentimental Mood」のヴォリュームが上がるこんな夜は女性ヴォーカル無しのひとりの時間を、ジャケットの衿を正して、背筋を伸ばして令和3年1月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏 bar sowhat 店主として日々人に向かい、酒を通して時間を提供する。ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から、事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオにて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動。 

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『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第2回

『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第2回

『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと師走に入り、大雪を迎えた夜にふと想い出す。あの女性がはじめて訪れた寒かった夜のこと。「あまりお酒が強くなくて…」そういう彼女のお好みは、ワインベースの薬草酒ヴェルモットのロッソをオンザロックスで。空間が保たれた手指でグラスをやさしく持ち、柔らかに微笑みながら少しずつ口に運ぶその姿。酒だからといってその姿勢が崩れることもなく、酒場のカウンターの幅が広く感じるその佇まい。「ごちそうさまでした、おやすみなさい。」そう言い残し、赤茶色のコートを手に、静かに扉を開け、優雅にコートを羽織る路地裏の風景。美しい景色に乾杯、とでも言いたくなる、寒かった夜の温かなひと時。時が流れ、暑かった夏の終わりのある日の夕暮れ。斜陽射し込む路地裏に、夕焼け色のワンピースを上品に着こなし、その女性は現れた。「今日は何をいただこうかしら…」酒場の主が徐に作りだしたその酒は、カンパリの赤、ヴェルモットの茶色が程よく溶け合い、ジンの香りと程よい苦みが、夏の夕暮れに似合いのカクテル「ネグローニ」「あ、美味しい…」カウンターの幅と空間が気にかかる暑かった夏の終わりのある日の夕暮れ。「ありがとうございます、いってきますね」夏の終わりの音に紛れたその言葉。年を重ねた師走大雪のころその夜の注文は「Stinger」針とか棘とか、そんな意味を持つ透明感のある茶色のショートカクテル。「ありがとうございます」その言葉を最後に、その美しい景色は二度とない。今年も寒い夜がやって来た。誰もいない夜更けには、Sophisticated LadyをBoz Scaggsのヴァージョンで。令和2年12月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏 bar sowhat 店主として日々人に向かい、酒を通して時間を提供する。ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から、事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオにて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動。

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