¥ 10,000以上のご注文で国内送料無料

『酒番日記』 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第19回

もう30年近く前のこと
当時はアメリカ製ビジネスバッグのブランドマネージャーとして忙しいふりをして働いていた
服は20代はじめのラルフローレン勤務の影響が色濃く残る全身アメリカントラッドなスタイル
紺色ブレザーにコットンパンツ、ボタンダウンシャツにレジメンタルストライプタイ
靴は当時まだ英国製が流通していたクラークスのデザートブーツがお気に入り
黒色、濃茶色、薄茶色、黄土色のワラビーブーツはもちろん、そんなスタイルだった
 
その夏、大きな仕事が成立して嵐のように忙しくなる予感と気配がしていた
仕事のはじまりの喜びと次に向けた調査のための「市価調」の最中に目に入った
期間限定、数量限定デザートブーツ限定カラー「ホワイト」!
ご褒美という自分勝手な言い訳を付けて迷うことなく買った
いつ、どこで、どんな時に履くか、その夏の楽しみになった
 
美しい女性に食事に誘われた、楽しいことは続くものなどと勝手に思い込んだ
迷うことなく白のデザートブーツを初めて履くことに決めた
下から決めたコーディネートでその週末を迎えることになった
白のデザートブーツに白のコットンパンツ、紺無地のサマーウールのブレザー
ブルーのボタンダウンシャツに紺色に白のストライプタイ、浮かれていた
 
夏の陽射しが降り注ぎ、不自然に強い風が吹く朝、足元軽やかな一日がはじまった
膝裏のシワが気になり出来るだけ座らなくても済むように仕事をこなした
 
いつもの居酒屋を避けて小綺麗なダイニングバーで素敵な夜を過ごしつつ
歩く時、店にいる時、話す時、いつも足元を気にする自分がそこにいた
もちろん目の前の女性が一番だったものの何だか本末転倒な夜が終わった
 
終電近い車内でも人混みを避けて立ったまま一日の終わりを迎える駅に着いた
 
酷く激しい突然の雨だった
タクシー乗り場などない駅前で大雨と足元を見ながら呆然と考えた
閉店間際に片付けはじめた売店で缶ビール一本を買い大きなビニール袋をお願いした
しぶしぶ対応するおばちゃんには目もくれず靴を脱いで袋に入れた、ビールとともに…
 
左手に鞄を抱え、右手にビニール袋を抱えこんで裸足で歩きだした
全身ずぶ濡れ、傘がない、守るは左右の手の荷物、本末転倒な帰り道だった
 
楽しかったはずの酒席が雨に追われて帰宅後に温くなった缶ビールを飲み干した
 
用意周到だったはずが準備不足だった若かりし頃の大雨の記憶
薄茶色になり黄土色になり濃茶色、黒くなるまで履き込んだ白かったブーツ
 
令和4年 雨の季節の雨の靴
酒番 栗岩稔
 
追伸、突然の雨には、1943年アメリカの同名ミュージカルからこの曲をLena Horne/Stormy Weather
 
栗岩稔プロフィール
鎌倉THE BANK、 銀座7丁目クロージングサロン、木挽町路地裏の酒場 bar sowhat、銀座5丁目 Ginza Sony Park Bar Morita で大人の集う酒場を作り上げ
人と酒と酒場をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく唯一無二のフリーランスの酒番として活動中
 
2021年夏よりパーソナリティを務める WAH! Radio www.wahradio.org  でお耳にもかかれますように
 
Webサイト開設のお知らせ
栗岩稔のSTYLEを人やモノを通して伝えるメディアとして  https://www.kuriiwastyle.com/ がはじまりました
少しずつですが栗岩稔のスタイルにご期待ください
こちらではお目にかかれますように

カート

All available stock is in the cart

カートは現在空です。