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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第8回

1989年6月 渋谷スクランブル交差点

交差するたくさんの人波に3回やり過ごす信号

初めての東京渋谷 初めての人々との初めての仕事

今にも逃げ帰りたい日々を救ってくれたのは

街の至るところにある公園

 

整然と並ばされた木々の新緑が揺れる風の公園

コンクリート堤防を流れる川がたゆたう水の公園

波の立たない作られた海浜の暑すぎる砂の公園

運ばれてきた土と作られた木で出来たベンチが濡れる雨の公園

煙りが漂い大人が潜む子供のいない児童遊園

 

都会だからこその公園、街中の広場

行き場のない人や休息を求める人々が集う公の居場所、留まっていられる自由な場所

 

そもそも明治維新の熱冷めやらぬ江戸から東京へと変貌していくさなか

明治6年に布告された法律に基づく公園制度によるとか

そのころの文言には「都市の肺臓」たるべし衛星環境のための公共の広場が云々とか

PARKなのか GARDENなのか PUBRIC SPASEなのかはさておき公の広場として

地方大名江戸屋敷の広大な敷地跡や寺社の持ち物の土地を借り受けて整備したとか

 

2021年6月 数寄屋橋スクランブル交差点

誰よりも前で、誰よりも早くわたりきり、陽光きらめく日比谷公園に向かう

明治36年完成のこの公園

東京初の公共図書館、東京で初めてフランス料理を提供したレストラン、東京で初めての結婚式場

一般民衆がはじめて耳にする西洋音楽の舞台

 

近代日本の思想と文化と風俗の歴史に彩られたこの公園

好きなもののすべてはここからはじまった

 

訪れた町のいたるところに広場があった

広場があるところにいつもそこにある酒場があった

ロンドンのパブ、バルセロナのバル、ローマのバール、ニューヨークのビアスタンド、パリのカフェ

訪れた町のいたるところで酒場に酔った

訪れた町の広場の酒場に人がいた

酒場の人も広場の景色になっていた

 

広場にいつもそこにある酒場があったらと思う今日この頃

居場所になり救ってくれた安息の場

季節がうつろい、雨が降ろうが、雪に埋もれようが、嵐に見舞われようが

いつもそこにある広場

 

広場で酒場をやりたい今日この頃

書きかけの原稿片手にベンチに座り

頭の中に流るるは、1989年発表の名アルバム

「雪村いづみ スーパージェネレイション」より「東京の屋根の下」

 

広場で酒場、広場と酒場、広場の酒場、酒場が広場…。

 

令和36月吉日

酒番 栗岩稔

プロフィール:木挽町路地裏の伝説の名店 bar sowhatを終え、新たなステージで日々

人と酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から

事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。20216月より

インターネットラジオ局にて番組パーソナリティとして参加するなど多岐にわたり活動

〇参考資料

吉川弘文館 歴史文化ライブラリー157 「公園の誕生」 小野良平著

幻戯書房 帝都公園物語 樫原辰郎著

 

〇お知らせ

6月中旬よりインターネットラジオ局 WAH!RadioにてJazを中心として映画や本など多岐にわたり、

選曲家で音楽ライター 大塚広子、垣畑真由の二人と語るカルチャー番組がオンエアされます。

ぜひお耳にかかれますように。 

WAH!Radio http://www.wahradio.org にて6月21日公開予定

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