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『酒番日記』 映画、音楽、本、時々酒、のこと 栗岩稔 第14回

先日、美術大学生の作品を基にしたトークセッションに参加した

インタビューを受けたのは今秋

どのような作品展示になるのかは全く見当がつかなかった

当日初めて見た、感動した

テーマは「花す」

「話す」ことが養分となり花を咲かす、とのこと

これまで「話す」ことを仕事にしてきた

今も「話す」ことがたくさんある

インターネットラジオ然り、各種イベント然り、このコラムもまた文章で話している

服の仕事では語り合うことからはじまる Be-Spoken

酒の仕事ではメニューが無いことからはじまり「話す」ことで探りあうコミュニケーションのスタイル

とにかく、たくさん話してきたことに改めて気づかされた

インタビュー当日も話し過ぎてインタビューにならなかったのではないかと思うほどに話した

その学生が生まれた頃に上京した

洋服屋では話す間もないほどに忙しく、また無口だった

かばん屋では営業トークが出来ない自分に腹が立ち痛飲した

コーヒー屋の親父には話せないことを注意された

バーの親父には洗い物ばかりでなく話すことが仕事だと言われた

とにかく「話す」ことが苦手だったし出来なかった

年を重ねるごとにたくさんの人に出会った

仕事をして本を読んで映画を観て音楽を聴いて話をした

少しずつ「話す」ことが出来るようになった

そして「話す」ことの大切さを感じた

黙っていては通じないこともわかった

今では「話す」ことが仕事になった

「話す」こと

Jazzではスタンダードナンバーの Speak Low

酒では禁酒法時代の潜り酒場 Speak Easy

数ある映画の中では特にフランス映画「エール!」

歌の才能を認められパリの名門音楽学校のオーディションを勧められた片田舎の少女

本人以外は聴覚障害の家族を持ち、その友人や小さな村の住人との間のコミュニケーションの役割を担う彼女

その夢と現実との葛藤、娘の歌声を聴くことが出来ない家族の葛藤

その中でも手話で「話す」ことで家族や人との絆を色濃く描いた作品

話さないことでその真偽を問うた1958年のテレビドラマ「私は貝になりたい」

 

酒場ではバーテンダーを目指すきっかけとなり大変世話になった老舗のバー

多くを語ることなく酒と所作で「話す」

 

とにかくたくさんの「話す」ことに気づかされたあの夜の「花す」

自身の花が咲くかどうか、いまだにわからない

それでも、これからも「話す」

誰かの花になるのであれば

 

頭の中には

41年目を淡々と迎えたあのバーのマスターが好きだった Herbie Hancock Speak Like a Child が流れる

夕焼け煌めく街を独り黙して歩く

雑踏の銀座、喧騒の師走

 

令和3年12月吉日

酒番 栗岩稔

GINZA STREET LAB https://creative.shiseido.com/jp/news/90340/

栗岩稔プロフィール
「鎌倉THE BANK」「 銀座7丁目」「木挽町 bar sowhat」「銀座Sony Park Bar Morita」で大人の集う酒場を作り上げ
「人」と「酒」と「酒場」をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく唯一無二、フリーランスの「酒番」として活動中
2021年夏よりWAH!radioパーソナリティ

開局1周年を迎えた WAH! Radio www.wahradio.org  にて
お耳にかかれますように 

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