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JOURNAL

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第7回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第7回

晩春に初夏の光射し込む大都会の片隅の喫茶店  平積みされた濫読中の本と香り立つジャーマンローストコーヒー  大好きなコーヒーの香りで思い出す    海辺の町の酒場の頃  選曲されて流れ出る曲と酒を楽しむひとりの女性  いつものように頭の中に流れる音楽が次々に流れ出すその時間  その曲が流れたその瞬間、ふとうつむきハンカチを取り出すその女性  時間は弛まず流れ続けるその酒場  帰り際にひと言「ありがとう、また」と美しい笑顔のその女性  あえてここに曲名は書かない、その理由は今でもわからない    海辺の町を立ち去るその日  自身と同い年の喫茶店で最後のジャーマーローストコーヒーをいただく  その旨さ記憶に刻み席を立つ  普段は口数少なくロボットのような動きで忙しい店内を取り仕切る店長がひと言  「前から思っていたんだけど、歩き方がJazzですよね」  「え、そうですか」  「そうですよ」  「10代の終わりからJazzばかり聴いていたからですかね」  「そうですよ、きっと」    海辺の町のプラットホーム  Jazzな歩き方って、今でも答えはわからない    高校2年の思い悩むある日  地元のレコード店に立ち寄る、いつもの書店と違うその日  ふと見つけたタイトルと美しいモノクロ写真のCDジャケット  「As Time...

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初めてのビスポークはネイビーブレザーを

初めてのビスポークはネイビーブレザーを

  ビスポークのネイビーブレザーを一着持つというのは良い選択肢だと思います。 ハンドメイドのビスポークなら30年は着られる。時代を超えるど定番のネイビーブレザーは年齢とか、記念日とか何かの節目に仕立てたい。30歳ぐらいで仕立てて、60歳ぐらいになった時に、これ30年着てるんだぞって自慢できるやつ。 何年経っても、年を経るごとに価値が増していくのが定番であり、ハンドメイドのビスポーク。 気がついたら子供が勝手に着てるなんてこともあるかもしれない。 スーツだと着る機会が限られちゃう方が多いと思うので、紺ブレならデニムや軍パンなどとスタイリングしてカジュアルにも使えるし、ここぞでタイドアップするのも楽しい。初めてのビスポークにもすごくおすすめ。最初はシングルで2着目はダブルに挑戦したい。 紺ブレ、ブレザー、ネイビージャケット、色々と呼び名はありますが英国系のしっかりとした生地で仕立てて身体に馴染ませるように着込んでいく。そういうことに本当に価値があると思います。 裏地に穴が空いて繕うぐらいになると愛着湧くんだろうなぁ。

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『美食通信』第5回 今回は「美食」ではなく、「美男」のお話を

『美食通信』第5回 今回は「美食」ではなく、「美男」のお話を

『美食通信』第五回 今回は「美食」ではなく、「美男」のお話を 島田さんから筆者の「美食」以外の業績の紹介もされたらどうかとご提案いただきました。ちょうど、去る4月13日に、光文社知恵の森文庫から拙著『隣の嵐くん―カリスマなき時代の偶像(アイドル)―』が発売になりましたので、手前味噌になりますがお言葉に甘えて、今回はそのお話をさせていただくことにします。 本のタイトルに登場する「嵐」とは、昨年末で21年間にわたる活動を休止したあのジャニーズ事務所所属の国民的アイドル「嵐」のことです。本書は元々、嵐が結成15周年記念のライヴを9月にハワイで行なうことになった2014年、その直前の6月に単行本として公刊したものです。本邦初の「嵐」の本格的評論として、おかげ様で三万部近く売れました。そこで嵐の活動停止を受け、今回、新たに総括的な一章を書き下ろし、文庫化が叶った次第です。文庫本を出すことは物書きとしての筆者の長年の夢でしたので素直に嬉しく思っております。また、新書はすでに2018年、鹿砦社から『イケメンホストを読み解く6つのキーワード』を出しておりますので残るは選書・叢書くらいでしょうか。 単行本の帯に「明治大学の人気講義が本になった」と謳われていますように、法学部の教養科目「自由講座」で嵐を取り上げていたのをもとに本にしたのでした。この講座は東洋大学の哲学科の助手だった1994年、「社会心理学」の担当を依頼され始めたものでした。セクシュアリティについて講義してほしいというリクエストだったのですが、真正面から取り上げると昨今と同じ「セクハラ」だとか「フェミニズム」などお堅い政治色の強いものになってしまいますので、「男は度胸、女は愛嬌」というのはもう古く、これからは男の子も見た目が肝心、「美男」じゃなければというお話をしたのです。そして、1996年に『美男論序説』という本を出すことになりました。 実際当時、ちょっとした「ゲイ」ブームだったり、今はマッチョのお手本の武田真治さんがいしだ壱成さんと共に「フェミ男」君として大人気だったりと男性のセクシュアリティも多様でファジーなものになっていたのです。そして、講義の中で筆者が重要視したのが「SMAP」でした。1991年CDデヴューで当初はまだ森君がいて六人組でした。これからはSMAPの時代が来ると「SMAPPINGする感性」という論文を書いたくらいです。画一化することなく、それぞれのメンバーが自分の個性を発揮しながら、それでいて、いやそれでこそ、グループとしての魅力も発揮できるという在り方はマニュアル化されない「美男」のモデルになるであろう、と。 そして、その後ジャニーズは講義の大きな柱の一つになりました。TOKIO、V6、ジャニーズJr、そしてその流れで「嵐」も取り上げたのです。しかし、2008年の「truth」を聴くに及んで、時代は間違いなく「嵐」を求めていると確信しました。そして、ひょんなことから「嵐」の本を書く機会を得たのです。実は当初、ちょうど第二次韓流ブームで「東方神起」について書けないかという依頼があったのです。もちろん、筆者はK-POPにも目配りを欠かさず、とりわけ2009年の韓国ドラマ『美男(イケメン)ですね』はそのタイトルからして、大々的に講義で取り扱ってきました。しかし、筆者の興味はそのドラマに出演したイ・ホンギがヴォーカルを務める「FTIsland」やジョン・ヨンファがリーダーの「CNBLUE」といったバンド系の韓流グループにありました。ですので、「東方神起」はお断わりしたのです。すると、「何なら書けるのか」と尋ねられ、筆者は「嵐」なら書けると答えたのです。出版社側も「嵐」なら売れると思ったのでしょう。Goサインが出たのです。 では、どうして時代はSMAPから嵐に移行したのか。そのヒントは本のサブタイトルに示されています。SMAPは各メンバーが個性的ではありますが、中でも「キムタク」が圧倒的なカリスマ性を現在も維持しています。それに対して、嵐にカリスマはいるでしょうか。筆者は2008年の「truth」で相葉君の存在こそ「嵐」の「要」であることに気づきました。その時点でドラマの主演をしていない唯一のメンバーが相葉君だったのです。今でこそ、嵐といったら相葉君と思う方は多いと思いますが当時はそうではなかった。つまり、相葉君、大野君といったメンバーが他のメンバーと対等に扱われるようになれば、カリスマなきアイドルグループとして「嵐」は新たな時代を創るに違いない。そして、事実その通りになったのです。 筆者の相葉君贔屓は、例えば、同じジャニーズの「NEWS」ならマッスーこと増田君贔屓ということになります。役者も「主役級」ではなく、オダギリ・ジョー様のような主役でも端役でも分け隔てなくサラッとこなしてしまうタイプが好きです。いやこれも時代の趨勢で、菅田将暉君などその系譜ではないでしょうか。さらに遡れば、トルシエジャパンに目をつけた筆者は2000年のシドニーオリンピックの前から、2002年の日韓ワールドカップは稲本潤一選手が「要」だと授業で取り上げ続けました。彼のポジションは「ボランチ」です。 このように四半世紀以上も「美男」について語り続けてきた訳ですが、「序説」に終わっていた「美男論」の「本論」の一つとしても、この『隣の嵐くん』を読むことは可能かと思います。機会があれば、是非手に取っていただければ幸いです。   今月のお薦めワイン  「名門ティエンポン家が造るカリテプリなボルドー」 「シャトー・オー・プランテ サン=テミリオン グラン・クリュ 2015年 ジャック・ティエンポン」 6160円   フランスの赤ワインの双璧はブルゴーニュとボルドー。また、ボルドーの中も左岸のカベルネ・ソーヴィニヨン主体のメドックとメルロ主体の右岸のリブールヌの二つのタイプに分かれます。五大シャトーはメドック。メルロを使った世界最高のワインとして有名な「シャトー・ペトリュス」は右岸のポムロールのワインです。そして、そのペトリュスを凌駕する高価なワインとして有名なのが同じポムロールの「ル・パン」。この「ル・パン」を造るのが銘酒「ヴュー・シャトー・セルタン」の持ち主ティエンポン家です。ティエンポン家ではリブールヌのもう一つの重要なアペラシオン、サン=テミリオンでも「ル・パン」のような希少性のある高価なガレージワインを造ろうと購入したのがこのオー=プランテでした。そして、セカンドワインとしてこのシャトーの名前を残し、2011年「リフ」というブランドを立ち上げたのです。2015年はグレイト・ヴィンテージですので「リフ」ですと四万円以上します。セパージュはメルロ80%、カベルネ・フラン20%。サン=テミリオンにしてはメルロ多めですが、ここはポムロールの造り手の腕の見せ所。このセカンドももう、市場ではほとんど見かけることが無くなってきましたので、これが最後のチャンスかも。どうか、お見逃しなく。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで 略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第6回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第6回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと街中に教えられた通りのスーツに着られ、スマホ片手に言われた通りのカバンを持った若者を目にする頃散り急ぐ桜の花と咲き急ぐ藤の花の下、ふと吉田健一著「酒談義」(中公文庫)の一説を思い出す。犬が寒風を除けて日向ぼっこをしているのを見ると、酒を飲んでいる時の境地というものに就て考えさせられる。そういう風にぼんやりした気持が酒を飲むのにいいので、自棄酒などというのは、酒を飲む趣旨から言えば下の下に属するものである。頭でっかちな酒の飲み方で、早く酔いたい一心でいれば、体の他の部分が承知しないから、それまでのむしゃくしゃした気持が悪酔いの不愉快な状態に変るだけである。むしゃくしゃしているのなら、面と向ってその気持なり、その気持の原因なり何なりを見詰めた方が男らしいように思える。尤も、酒を飲めばそれが一層よく出来るというのなら別で。それならばそれは自棄酒の部類に入らない。(本文より抜粋)35 年前人生はじめての自棄酒というものにやられた。自棄の理由は若気の至りのフラれた男子。人生はじめての二日酔い。人生はじめての大ケガがもとの、人生はじめてのヒゲ。記憶にあるのは転がった道路から見上げたきれいな春の夜空。そういえば今朝の新聞文化欄「飲みニケーション」どこへ行く、という記事を見た。「飲み二ケーション」は日本型社会の美点とさえいわれたが、そっぽを向く若者も増えている。「飲み会」は、どこから来てどこへ向かうのか、とはじまる文面。(朝日新聞文化欄より抜粋)35 年前の自棄酒以来、独り酒が多く自身も「飲み二ケーション」とやらは不得手であった。それでも、酒席での大切なコミュニケーションはとれていたと思うが…。民俗学者柳田国男著「明治大正史世相篇」(平凡社)の中で、独酌はたしかに又明治大正時代の発達であった。元来は酒は集飲を条件として起ったもので、今一つ以前は神と人と、共に一つの甕のものに酔ふという点が、面白さの源を為して居たのである、ともある。(本文より抜粋)酒で失敗した男の映画は数あれど、吉田健一著「酒談義」(中公文庫)、柳田国男著「明治大正史世相篇」(平凡社)をご一読あれ。今日はとっても演歌な気分、吉幾三「酒よ」でも。明治大正昭和平成令和、酒は何処へ向かうのか、などと大それたことを一考する日向ぼっこの桜のベンチ。手にしたコップに花弁一枚落ちてきた、今日もやっぱり独り酒。令和3 年4 月吉日酒番栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏bar sowhat を終え、新たなステージで日々人に向かい酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオ局にて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動

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『美食通信』第4回「白ワインは葡萄品種を楽しむ」

『美食通信』第4回「白ワインは葡萄品種を楽しむ」

『美食通信』第4回「白ワインは葡萄品種を楽しむ」筆者は赤ワイン党ですので白ワインを飲もうという気にあまりなりません。というのも、自分くらいの年齢ですと、子供の頃、世間でワインと言えば、赤玉ポートワインか蜂ハニーワインといったスティルワイン(通常のワイン)ではなく、成人になり、ようやく口にすることになった真っ当な?ワインがTVで盛んに宣伝していた「マドンナ」、あと「リープフライミルヒ(聖母の乳)」、「シュヴァルツェカッツ(黒猫)」といった甘めの安価なドイツの白ワインで正直口に合いませんでした。まあ、ポルトガルの「マテウスロゼ」はまだ飲めた方か、と。という訳で、ワイン=白ワインに良い印象がなく、フランス「料理」の方に傾倒していったのです。ワインの奥深さに気づかされたのが三十歳を過ぎ、ちょうどパリに出かける頃でした。そのきっかけはムートンの84年でしたので、それ以来、ボルドー、ブルゴーニュとフランスの赤ワイン一筋です。 赤ワインの醍醐味はもちろん「渋み」です。酸と渋みのバランス。この「渋み」は果皮、果梗といった部分から抽出されます。その点、白ワインは基本果肉だけですので、果実味と酸で勝負することになります。そこで、葡萄品種が大切になります。そこで、味わいと共にその葡萄品種特有の香りもしっかり押さえる必要があります。それに対し、若き日の安ドイツワインは多くがブレンドものでした。実際、アルザスワインは最上のグランクリュに四つの葡萄品種が名前を連ね、最も手頃なヴァン・ダルザスがブレンド物です。つまり、白ワインでブレンドものは基本避けるべきでしょう。 では、何を基軸に据えれば良いのか。それはまず、「ブルゴーニュ」の「シャルドネ」です。ブルゴーニュが「ワインの王様」と呼ばれるのは、赤も白もただ一つの葡萄品種だけで芸術的なワインを造り出すからではないでしょうか。しかも、南北に長いブルゴーニュの中で、北の飛び地の「シャブリ」から南端のボジョレーの手前の「マコン」に至るまで多様なシャルドネが造られています。その最高峰はやはり、「コート・ドール(黄金の丘)」のボーヌにある「モンラッシェ」、「ムルソー」辺りでしょう。ちなみに、「ロマネ・コンティ」に代表される赤はニュイの方です。 白ワインで最も重い(フルボディ)とされる「シャルドネ」はさらに、樽にかけず酸がしっかりした「シャブリ」型と樽がけして複雑さが増し、熟成を楽しむ「ボーヌ」型に分かれます。さらに「シャルドネ」は世界で最も植えられている葡萄品種でもありますので、それぞれの国・土地の特徴がこれに加わり、価格もピンからキリまで多彩なワインを楽しむことが出来るでしょう。 赤ワインを知ろうと思えば、ブルゴーニュとボルドーを比較して二分法で飲み分けていくのが得策と申し上げたと思いますが、白ワインも同様に飲み進めると良いでしょう。その際、ブルゴーニュ=シャルドネと対照すべきはアルザスワインと考えられます。というのも、ボルドーは数種をブレンドすることでピノ・ノワール単品種のブルゴーニュに対抗したのですが、アルザスは前述のようにグランクリュにリースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカの四種、さらに、ピノ・ブラン、シルヴァネールといった「多数」の単品種のワインを造っているからです。リースリングはドイツワインの主品種ですし、ピノ・グリ(伊ではグリージョ)はイタリア北部で上質のワインを生み出しています。また、白ワインの中で最も香りの強いゲヴュルツトラミネールはほぼアルザスに限られるなど、アルザスワインを知ることで白ワインの様々な葡萄品種とその地域分布・特性などを知ることが出来ます。 もちろん、フランスだけでも他に、ロワール地方の「シュナン・ブラン」、「ミュスカデ」、ボルドーの「ソーヴィニヨン・ブラン」そして貴腐ワインに欠かせない「セミヨン」などがありますが、それはまたの機会に。ここではローヌ地方で「コンドリュー」というアペラシオンを名乗るワインを造る「ヴィオニエ」種を挙げておきましょう。昨今は世界中で造られているようですが、極めて限定的な地域で造られしかも早飲みの高級白ワインという変わり種。桃や花の甘やかな独特の香り、酸が強くないのでリッチでオイリーな味わいと表現されることも。中でも「シャトー・グリエ」は「ロマネ・コンティ」同様、それだけで一つのアペラシオンを名乗れる秀逸な畑。「コンドリュー」と記憶され、機会があれば是非一度、お試しあれ。 そして、最後に日本にも「甲州」という世界に認められた葡萄品種があることをお忘れなく。「シュール・リー」製法によって、発酵後すぐ澱引きせず、酵母のコクや旨味をワインに与えることで、爽やかな「コクとキレ」という日本人好みのワインが造られています。日本ワインは「白が主」であることを再確認していただければ幸いです。今月のお薦めワイン シャルドネ最良の魅力をリーズナブルに堪能する「サン・トーバン プルミエクリュ ル・シャルモワ 2014年 ドメーヌ・オ・ピエ・デュ・モンショーヴ」 6300円(税抜)本文で白ワインの最高峰はブルゴーニュの「モンラッシェ」、「ムルソー」辺りであろうと書きました。これらはブルゴーニュの中でも「コート・ドール(黄金の丘)」と呼ばれる地域のさらにコート・ド・ボーヌと呼ばれる部分にその畑があります。樽がけすることもありますが、酸と果実味という白ワインの基本的特徴のほかに、ナッツ、ハチミツといった独特の香りや味わい、熟成に耐え、黄金色に変化してリッチで複雑な美味しさが堪能できるという秀逸さ。しかし、最低でも一万円からを覚悟しないといけません。そこで、もう少しリーズナブルにこうしたシャルドネの良さを楽しむにはこれらの周辺にある村のワインを探すと良いでしょう。その一つが「サン・トーバン」です。サトクリフは「ブルゴーニュの秘められたる宝石の一つ」と評し、良心的な造り手による良質のワインが良心的な価格で提供されていると書いています(『ブルゴーニュワイン』、132頁)。今回紹介させていただくワインはプルミエクリュ畑のもので、作り手はシャサーニュ=モンラッシェ村にメゾンを構えるネゴシアン、ファミーユ・ピカール社の三代目フランシーヌ女史が2010年に開設したドメーヌ。ビオディナミ農法、、手摘み収穫、100%除梗等々手間暇をかけ、品質の良さを追求する姿勢が高い評価を受けています。2014年はヴィンテージもよく、ちょうど最初の飲み頃ではないかと思います。是非、この機会にシャルドネの真髄の一端をご堪能下さい。ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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手縫いの考え方

手縫いの考え方

皆様、こんにちは。前回のブログから1年半ほど経ってしまいました。2019年の終わり頃ブログを書いていた時は、世界中がこんな事になっているとは全く想像しておりませんでした。新型コロナウィルスの世界的な流行…明るい気持ちで新しい洋服を!という気分にはなれないと思います。そんな中ですが、私の仕事は洋服を仕立てる事です。コロナ禍で私に何が出来るかと考えます。答えは一つ。皆様が新しい洋服を着たい!と思った時に、今まで以上のスーツをご提供出来るよう、技術を向上させる事です。今は以前に比べてさらに手縫いの箇所を増やし、着やすく疲れない洋服を仕立てられるよう勉強しております。タイトルにも据えましたが、ブログ再開一回目は手縫いの考え方です。写真は脇入れをしているところです。(前身頃と背中を縫い合わせる)見えているのは背中の裏です。背中の裁ち端を切り躾に合わせて0.7cmのところを絹地縫糸で縫っていきます。見ていただくとわかりますが、針目はかなりの荒さです。これはハンドルステッチをもう一本入れる為です。脇の縫い目に対して二回糸が入りますから一本目の地縫いが荒くとも全く問題ありません。(縫割りの時はもっと細かく縫います!)そして手縫いによって "糸にゆとりを持たせる" 事ができます。これはミシンには不可能で手縫いでしか成せない事です。このゆとりが大切で腕を動かした時に生地が伸びるのと同時に縫い目も伸びてくれます。この糸のゆとりですが、シルエットを出す部には不必要だと私は考えます。ですからアームホールからウエストに向かって10cm〜12cmまではゆとりを入れながら縫い、そこから下は縫い目が吊れない程度に締めて縫い進めます。こうする事でシルエットの保持と腕の動かしやすさの両方が表現出来ます。今まで何故脇入れに手縫いをしなかったかと申しますと、私には手縫いで縫ったものがどうしても綺麗に見えなかったからです。それも反復して縫う事、針目をきれいに入れることで克服できたのでは無いかと思っています。今後も続けてさらにきれいにできる様努力して参ります。ミシンにはミシンの良さがあり、手縫いには手縫いの良さがあります。それを適材適所で選択していく事が大切です。手縫いを増やす事により糸のゆとりを様々な所に入れる事ができました。柔らかく美しいシルエットの中に動かしやすさを兼ね備えた洋服が私の理想です。そこにお客様のご希望を反映させて洋服は出来上がります。こんなに楽しい仕事は他にはありません。日々洋服を縫える喜びを噛み締めながら、これからも精進していこうと思います。それでは失礼します。The Cloakroom三枝塁

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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第5回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第5回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと三寒四温という美しい言葉が似合いのこの頃、改めて酒場について考える映画「ゴッドファーザーpartII」のなかで裏切った仲間を暗殺する場として選ばれたのは開店前の薄暗い酒場店の主人がグラスを磨き、明かりのない店内で外光とグラスの輝きだけが象徴的なワンシーンデイビット・リンチ監督作品「ストレイト・ストーリー」の美しいラストシーンにむかうひとコマ戦後酒を断っていた70代後半の主人公と10年来、ささいな口論がもとで断絶していたその兄病に倒れた兄の元へ自分が唯一行くことができる手段「トラクター」で500km以上旅をするひたすらまっすぐに旅を続け、兄の所在がようやく明らかになり、旅の終わりの見えた安心感と喉の渇きを潤す町外れの酒場でアメリカ製の瓶ビールを旨そうに飲む主人公「もう一本いくか?」「いや、これでもう十分」年の頃が似通った二人が交わす最低限の必要な会話の後、場面が変わりエンディングへと向かう映画もさることながら、ラジオでも酒場を舞台設定にした番組が多数、日本歌謡の名曲「酒場にて」数え上げたら切りがない酒場の場面とその景色少しだけ日が伸びた夕暮れの街を歩く明かりのつかない酒場を眺めながら、30年前のマスターの言葉を思い出す「酒場の明かりはね、消したらダメなんですよ。行きたいと思った時に必ず開いていないと寂しいでしょ必ず開いていて明かりが灯っていて出迎えてくれる酒場じゃなきゃ…。」長い長い高架下の商業施設、明かりが消えた店舗の中少しだけ明かりが洩れる入り口の休業の貼り紙に肩を落とし立ち去る時に感じる人の気配カウンターの明かりを灯し、グラスを磨き酒瓶を磨く店の関係者に少しだけの安心感と再来を決意そういえば「バーテンダーの仕事って何ですか?」という質問に「バーテンダーはね、掃除ですよ、掃除…。」そんな誰かの言葉も思い出す。この春、片付けを終えた何もない酒場に残るドライフラワーは知らずに訪れた人への感謝と詫びの標最後に花束を贈ってくれた、普段より少しだけドレスアップした男性とシックな色合いの美しい女性「今日はここにあいさつに来るからやっぱりスリーピースでなきゃ」と会話を交わす紺と白のコーディネーションが美しい40代の男性必ずジャケットを羽織り、一杯しか飲めなかった酒がいつしか二杯飲むようになった20代初めの男性もいまでは30代目前「生存確認だからな」と言ってジントニック、時にはマティーニを一杯だけ飲んで帰る70代後半の男性たくさんの美しい景色に彩られた酒場の時間鍵を渡し、明かりを落とし、町に別れを告げるその手にはホウキと雑巾最後の曲はやっぱり、Miles Davis/Kind of Blueより「So What」夕暮れから夜にむかう、大好きなすき間の時間今日も必ず開いている、外光射し込む酒場にて、30年来の仲間のもとで、ビールを一杯だけ令和3年3月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏bar sowhat を終え、新たなステージで日々人に向かい酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオ局にて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動

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『美食通信』第3回 「制服というお洒落」

『美食通信』第3回 「制服というお洒落」

前回、ドレスコード、中でも「ジャケット着用」の可否について書かせていただきました。女性の場合、レストランへ出かけるのに色々な服装を楽しめるのですが、男性の場合、ジャケットやスーツをベースに、シャツ、さらにネクタイやカフスなど、微妙な差異のお洒落具合に気を配る必要があります。これはこれでとても素敵なことだと思うのですが、ほかの服装の可能性はないのでしょうか。 まず、日本人である限り、和装という選択はあります。ただ、日本料理であれば当然ありと思いますが、フレンチでは余りお目にかかったことがありません。履き物が気になります。サンダルなどはアウトというのがマナーですので、草履とかどのように解釈するのだろうか。女性ですと着物もありかと思いますが、男性はなかなか難しいですね。 では、他に着ていくものがないかと言えば、実は「制服」というのがあり得ます。もちろん、職種にもよりますが。筆者はパリで軍服を着た男性をグランメゾンで目撃したことがあります。もう、四半世紀も前のことですが、パリ十六区にあった「フォージュロン」というグランメゾンでのことです。筆者が出かけていた頃は二つ星でした。十六区は保守的な右岸(リヴ・ドロワット)の高級住宅街で、晩年のマリア・カラスなどが住んでいました。筆者が出かけた頃はロビュションもポアンカレ通りにありました。フォージュロンはトロカデロ広場のすぐ近くにありました。トロカデロ広場にかかるイエナ橋を渡ると目の前にエッフェル塔があるというロケーションです。 料理もそうですがクラシックな店で、店構えや内装なども「ブルジョワ」という言葉がピッタリ。当時としても珍しかったのですが、食後にシガーのワゴンサーヴィスがあり、必ずやゴロゴロと音を立てながらワゴンがどのテーブルにもやって来て、「シガーはいがかしましょうか」とメートルに尋ねられるのです。嗜む者はほんの少数で、ほぼ儀式化していたのですがそれがまた味わい深いというか、独特の雰囲気を醸し出していました。筆者がこの店によく出かけたのは、ジャンボンさんという世界一になった(田崎真也氏と同じコンクール)ソムリエがいたからで、このソムリエのワインリストが素晴らしかったからでした。 そんなフォージュロンを訪れたある日、若いカップルが客にいました。驚いたのは男性が軍服を着ていたのです。男性というより青年いや少年といってもよい顔立ちで、なんとも初々しい。軍服も礼装用なのでしょうか、宝塚歌劇団の『ヴェルサイユの薔薇』でアンドレが着ていそうな(オスカルではありません)スマートでお洒落ないで立ちでした。ナポレオンコートなどフランスの軍服はファッションに転用されていますし、良くも悪くも古色蒼然としたレストランにふさわしく、かつ華を添えてくれていました。本人はグランメゾンなど初めてで何を着て行ってよいか迷った挙句、礼装用の制服を着てきただけかもしれませんがこれはこれで見事なコーディネイトでした。では、これはフランスならではのことかと言えば、筆者は日本でもフレンチで制服を着た方々にお目にかかったことがあります。それはパリに出かけるさらに前ですので三十年近く前になりますがクリスマスディナーの席でした。当時、クリスマスは若者の一大行事で、都内のホテルやレストランは一年前から予約しないと取れない場合がありました。しかも、ディナーは二回転、三回転とまともな食事の体を成していませんでした。そこで、筆者は御殿場に新しくできた「オーベルジュ・ブランシュ富士」でクリスマスを過ごすことにしていたのです。御殿場駅からタクシーで十五分ほど山中湖に向かう国道138号沿いにあったオーベルジュで1991年に開設、一度改装を経て2013年に閉館しました。さすがに雪さえ混じることもある冬のさなかにここまで人は来ないので、静かなクリスマスを過ごすことが出来ました。ところがある年のクリスマスイヴの夜、ディナーをしにレストランへ降りていくと制服を着た団体の方々がいらっしゃったのです。宿泊客は自分たちを含め。二、三組だったと思いますので、制服を着た方々のほうがはるかに多かったのです。ご存じのように、御殿場には陸上自衛隊の演習場や駐屯地があります。調べますとすぐのところに、富士駐屯地があり、そこには学校や病院もある模様。おそらく、そこの関係者のお偉い方々の忘年会を兼ねた会食ではないかと。長いテーブルに制服を着た自衛隊員の方々がずらりと並んで会食されている光景を目にしながら、クリスマスディナーをいただくのも一興でした。本当にマナー良く静かに食べられていて感心した記憶があります。その制服もフランスとは違って地味ではありますが、颯爽としてカッコいいものでした。ただ、階級などの違いはあるのでしょうがどの方も同じ服装でそれはそれで壮観でした。こうして考えてみますと、制服ということでしたら、警察とか消防でも礼装用があるかと思いますし、パイロットやCAもありそうですが、そのような制服でレストランに来られることはまずないかと思います。今後ますますジェンダーフリーの世の中になっていくでしょうから、ドレスコードも変化していくかもしれません。まずはスーツやジャケットの中で微妙な差異を楽しむお洒落を身に着けていくことこそ、新たなファッションへと繋がる道だと考える次第です。今月のお薦めワイン  イタリアワインでジビエに合わせるとしたら?「ゲンメ 2011年 ロヴェロッティ」 6800円(税抜)ジビエと言ったらフレンチばかりではありません。イタリアンだって黙ってはいないでしょう。イタリアンにあってフレンチにないのはパスタ料理。ジビエを使ったパスタ料理に合うイタリアワイン。ヒントは前回のポマールです。イタリアワインでポマールに相当するワインを探せばよいのです。フランスワインの二大産地はボルドーとブルゴーニュ。イタリアワインの二大産地はトスカーナとピエモンテ。ボルドーはトスカーナに。何故なら、サッシカイアといったボルドーの葡萄品種を用いる銘酒も造っているから。ブルゴーニュはピエモンテに。どちらも単品種(ピノ・ノワールとネッビオーロ)からのワイン造り。ポマールはブルゴーニュでボーヌでした。ブルゴーニュの赤のメインはニュイ。ということは、ピエモンテのメイン(バローロとバルバレスコ)が州の南部ですので、州の北部のワインを探せばよいのです。その中でお薦めなのが「ゲンメ」。中でもロヴェロッティは「賞賛されている」(アンダースン、『イタリアワイン』)代表的造り手です。北ピエモンテだけで混醸用に用いられているヴェスポリーナが15%、ネッビオーロ85%というのも個性的。香水のような魅力的な香り、口中に広がる味わいも格別。ですので、しっかり空気に触れさせてから飲まれるのが良いでしょう。ジビエの個性に負けない主張を持った美味しさ。エチケットもお洒落です。購入先はアヴィコインラインストアまで略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第4回

『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第4回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと春の声が聞こえてくる街を足早に急ぐ保険関係らしき4人の男前列左、手ぶらで歩く一番の上司、前列右、真顔で早口に説明をするその部下後列左、スマホを眺めるその部下、後列右、笑いながら話をするそのまた部下先頭左、紺のスーツに不自然な硬さに見える白いシャツ、紺ストライプのネクタイ不自然に光る皮革のような黒い靴先頭右、紺のスーツにヨレヨレの白いシャツ、弛んだ紺のネクタイ、黒のスニーカー後列左、少し明るめの紺色で寸足らずのスーツにブルーのシャツに青いネクタイ磨かれていない黒の革靴、裾から覗く黄色い靴下後列右、ヨレヨレの紺のスーツにブルーのシャツに喉仏が見えるほど弛んだネクタイ踵が斜めに削れた色あせた茶色の靴春の光あふれる午前8時にふと想う否定はしないが、何かが違う、大丈夫かな、日本人15年以上前、まだ寒い2月のロンドンの街角のとある商談の場紺無地スリーピーススーツにサックスブルーのシャツ、紺無地のネクタイの日本人仕立ての良い紺無地のスーツに白いシャツ、弛むことのない紺無地のネクタイ磨き上げられた黒いビジネスシューズの英国人男性和やかに時間が流れ商談が終わる紺無地のチェスターコートを手に持ち、レザーグローブを左に右手で握手微笑みながら英国人のひと言「ところで、なぜ今日はエドワードグリーンの茶色のタウンシューズなんだい?」しばしの絶句の後のひと言「申し訳ない…」気の利いたジョークを返すことなく、日本人得意の作り笑いで取り繕い夕暮れ迫り寒さ沁み入る街を向かった先は少しだけなじみの小さなパブ商談の成功と自身の反省に、ビールがすすむロンドンの日本人そういえば以前観た映画の中で地方から大都市に引っ越す孫に言う祖母のセリフ「何か困ったことがあったらその人の靴を見て判断なさい」タイトルも年代も忘れた映画のセリフを思い出す春色膨らむ街角で頭の中に流るるは「Thelonius Monk/Solo Monk」よりThese Foolish Things (Remid Me of You)やっぱりジャズ…令和3年2月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏 bar sowhat 店主として日々人に向かい、酒を通して時間を提供する。ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から、事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオにて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動。

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『美食通信』第2回 「三つのロビュションとドレスコード」

『美食通信』第2回 「三つのロビュションとドレスコード」

『美食通信』第2回    「三つのロビュションとドレスコード」筆者が島田さんと出会ったのは、恵比寿ガーデンプレイスにあるシャトーレストラン「ジョエル・ロビュション」の一階、『ミシュラン』二つ星の「ラ・ターブル・ドゥ・ジョエル・ロビュション」で行なわれたワイン会でのことでした。同じシャトーの二階には三つ星の「ジョエル・ロビュション」があり、六本木ヒルズにはこれまた二つ星の「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロビュション」がありますので日本だけで七つ星。本拠地パリでは右岸と左岸に二つ星の「ラトリエ」を二軒持つだけですので、日本人のロビュション贔屓がいかなるものか。ちなみに、日本の一階はフランスでは「零階」ですので、本格のグランメゾンはフランスの一階即ち日本の二階にホールを備えます。例えば、日本では昨年惜しくも閉店した老舗、芝の「クレッセント」などがそうでした。そして、一階は宴会場などに。 ある日、大学に出講する電車の中で携帯に着信があり、折り返し電話してみると高校の同級生が夜、ロビュションに来れるかと。主催するワイン会の記念ディナーを盛大に行なうとのこと。当日来れなくなった方が出たようでピンチヒッターという訳。大人数の宴会が苦手なのでお断わりしようと思ったのですが、招待してくれるというのでロビュションの宴会料理がどの程度のものか確かめたくなり、出かけることに。宴会なので当然、一階の「ターブル」だと。承諾すると友人は「ところでジャケットは着ているだろうね」と聞くではありませんか。筆者は講義の際、ジャケットを必ず着るようにしています。そこで「着ている」と答えると「それならよろしい」と来場をお許しいただけた次第。しかし、筆者のジャケット着用はお洒落でも権威付けでもなんでもなく、貴重品などを身に着けておくとか、チョークで汚れてもよいようにいわば作業着感覚で実用的な発想からのこと。 実はこの時、筆者の脳裡にはかつて二階のメインダイニングに出かけた時のことが。それは1994年秋の開店から少し経った1995年の二月頃だったと。しかも、当時は「ジョエル・ロビュション」ではなく、「タイユヴァン・ロビュション」でした。ガーデンプレイス開場の目玉として、鳴り物入りで、パリの三つ星の老舗「タイユヴァン」のサーヴィスと「ロビュション」の料理のコラボ、世界初の「六つ星」だ、と。「タイユヴァン」はジャン=クロード・ヴリナというサーヴィス出身者がオーナーで、そこで地下には「カーヴ・ド・タイユヴァン」というワインショップも併設されました。とにかく予約が取れなくて、ようやく年明けに空きが出て出かけることに。その際、ドレスコードの「ジャケット着用」でちょっとした事件が。 「ターブル」も「ジャケット着用」なのか、と。HPを調べてみると、二階は「男性のお客様はジャケット又は襟付きシャツのご着用をお願いします」とあり、階下の「ターブル」も同じ文言が。ということは、「ジャケット着用必須」はワイン会主催者の意向で格式ある祝宴なのだろう、と。まずいな。案の定、講義を早めに終え、タクシーで駆け付けると着飾った人々の群れが。そそくさと指定された席に着くとヨレヨレのジャケットを着た筆者とは対照的にお洒落なスーツをばっちり着こなした紳士が隣にいらっしゃるではありませんか。この方は常連に違いないと、初めて参加して何が何だかわからない筆者は初対面なのにその紳士にあれこれ聞きまくってしまったわけで。で、その紳士こそ、島田さんだったのです。 ところで四半世紀前、筆者の訪れた二階のメインダイニングは本当に「ジャケット着用必須」だったのです。つまり、現在は認められている「襟付きシャツの着用」は許されていなかった。そこで事件は起りました。その日、筆者に同行したのは教え子でした。当時、筆者はワインを本格的に学び始め、たまたまその学生もワインを勉強していて、講義の後は必ず一緒にワインを飲み歩く仲で、彼の誕生日を祝う会食だったのです。筆者は「ジャケット着用」と聞いていたので念を押して注意したのですが、現われた彼は白地のお洒落なドレスシャツを着ていました。ブランド物でこの日のために新調したとのこと。もちろん、「襟付き」でした。一方、当時尖がっていた筆者はジャケット着りゃいいんだろうとばかりに、ゴルチエのヒョウ柄のジャケットを着て行ったのです。で、悲劇的な結末に。クロークで、彼はひきとめられ、レストランの用意した不釣り合いな冴えないジャケットを着させられたのです。折角のシャツはお隠れになりました。一方、筆者はもちろんお咎めなし。しかし、メートルは明らかに怪訝な顔つきに。彼と言えば、怒りの矛先を探そうにもどうしようもない訳で。何とも気まずい高級ディナーとなった訳です。 この杓子定規さはさすがに現在、なくなったようです。しかも、ヒルズの「ラトリエ」には恵比寿のようなドレスコードは書かれていません。「ラトリエ」は親日家だったロビュションが寿司屋からヒントを得たカウンターが主の店で、パリが二店とも「ラトリエ」であることからもわかるように現在はこのスタイルがロビュションではスタンダードです。筆者は台北旅行の際、「ラトリエ」によく出かけます。台北はまだフレンチが少なく、『ミシュラン』で星を取っているフレンチは「ラトリエ」だけだからです。まあ、気軽なもので皆さん、ポロシャツとか普段着でランチされています。着飾った方もお見受けしますが。もちろん、値段は立派なものです。 こうしてみますと、ジャケット着用の是非というより、グランメゾンにはそれに相応しいお洒落をして行くことが求められているというのが結論です。とすれば、二十五年前の彼は間違っていなかったことになります。まあ、この連載を読まれている方々には自明の理かも知れませんが。それでも逆説的になりますが、筆者はジャケットを着ていくことをお薦めします。それはグランメゾンの場合、テーブルで会計しますので支払いの際、バックをまさぐったり、お尻のポケットから財布を出す等々はやはりスマートではないからです。もちろん、常に誰かが払ってくれ、自分が支払うことのない殿方であれば、それに相当しません。羨ましい限りです。今月のお薦めワイン  ジビエと合わせたい赤ワイン「ポマール レ・ペリエール 2015年 ドメーヌ・セバスチャン・マニャン」 7200円(税抜)そろそろジビエの時期も終わりが近づいてきました。コロナ禍で外食はままなりませんが、昨今はお取り寄せで「家ジビエ」を楽しんでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そんなジビエに合うワインはと申しますと、やはりちょっと「クセのある」ものの方がよろしいか、と。ボルドーであれば、古典的なメドックより右岸のポムロールとか。コート・ドールであれば、やはりニュイよりボーヌの赤。お薦めはポマール村のワインです。ブルゴーニュにしてはタンニンしっかりで飲みごたえもバッチリ。お肉の個性に負けません。今回紹介するのはさらに畑の名前も明記されていますのでワンランク上の味わいが。しかも、2015年はヴィンテージが良いので今飲んでも美味しいですし、まだまだ寝かせることも出来ます。造り手のセバスチャン・マニャン氏はムルソーにあるドメーヌの四代目。1981年生まれで欧米の多数のワイン雑誌から若手の有望な造り手として評価されています。レストラン卸しが主のインポーターさんからの直販ですので完売かヴィンテージ変更の可能性があること、ご了承下さい。前回のシャンパーニュ同様、一般には手に入らないワインですのでこの機会に是非。購入先はこちらのAVICOオンラインストアまで略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第3回

『酒番日記』映画、音楽、本、時々酒、のこと 第3回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと寒さ深まる初春の午後、ヴィンテージのZIPPOオイルライターで火をつけるタバコ吸いの肩身が狭い今日この頃の路地裏の片隅でそういえばこのライター、リーヴァイス501の腰ポケットにピッタリ収まるサイズと面取りされた無骨過ぎない形がお気に入りだった若い頃無類のコーヒー好き、おまけにナポリタンスパゲッティにも目がなくランチセットなどの看板が出ていたら迷わず飛び込む喫茶店自分の好みとあれば、いつもの曜日にいつもの席にいつもの時間でいつものメニュー少しでも認識してもらえるかもしれない小さな小さな作戦計画その日もいつものようにいつもの席に座る店のホール担当の女性が水を置きながら 「いつもの?」「はい、お願いします」あいさつ以外のたったひとつの会話少しのハムとマッシュルーム、ピーマンスライスの緑が効いたナポリタンスパゲッティ食べ終わるころに運ばれて来る、強めの焙煎の豆をサイフォンで入れたブレンドコーヒーそして至福の一服飛び散ることのない灰と吸い殻がきれいに分かれた灰皿とコップを残して席を立つ東京渋谷への転勤が決まり、出発日のランチに迷わずいつもの席でこの日だけは一本多いタバコの吸い殻を残して席を立ついつもはさりげなく流れる店内の音楽のヴォリュームが一段上がる当時大流行したプリンセス・プリンセスの「M」に足を止める「ありがとうございます」「いってらっしゃい」ひとこと多いその日の会話あれから30年以上が過ぎた今宵、いつものバーのいつもの席でいつもの酒手には小さめの葉巻と専用ガスライター、カウンターにきれいな灰皿とグラスがひとつ大切な少しの時間と積み重ねて来た大切なたくさんの時間葉巻と白い灰がきれいに並びグラスが空になりかけた頃デューク・エリントンとジョン・コルトレーンの名演「In A Sentimental Mood」のヴォリュームが上がるこんな夜は女性ヴォーカル無しのひとりの時間を、ジャケットの衿を正して、背筋を伸ばして令和3年1月吉日酒番 栗岩稔プロフィール:木挽町路地裏 bar sowhat 店主として日々人に向かい、酒を通して時間を提供する。ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から、事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。来春から、インターネットラジオにて番組パーソナリティも予定するなど多岐にわたり活動。 

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『美食通信』第1回 オールマイティーだが奥深いシャンパーニュ

『美食通信』第1回 オールマイティーだが奥深いシャンパーニュ

『美食通信』第1回「オールマイティーだが奥深いシャンパーニュ」あけましておめでとうございます。そしていよいよ、この『美食通信』も本格的にスタートです。どうか、よろしくお願いします。さて、おめでたい席でのお酒といったら、やっぱりシャンパーニュですよね。フルートグラスの底からツゥーっと一直線に立ち昇る泡、口の中で弾ける炭酸の爽快さ。どれも心華やぐものです。宴席の乾杯だけでなく、フレンチを食べに出かけた際もアペリティフ、つまり、駆け付け一杯、いや、スターターのようなポジションに思われがちなシャンパーニュですが、マナー的には、オードブルからデセールまですべての料理にマリアージュ出来る万能のワインなのです。そう、食前酒から食後酒までそれ一つで通すことが可能ですので、お酒があまり得意でない方は二人でシャンパーニュ一本オーダーすれば、最初から最後まで何も憂うことなく食事を楽しむことが出来ます。デートの際など、やはり二人だけのブテイユ(ボトル)のワインを分かち合うのがお洒落ではないでしょうか。また、通常のワイン(スティルワイン)の場合も抜栓から刻一刻と味が変化して行くのを楽しむのが通ですので、本来ワインはブテイユで注文されるのがスマートです。通常のワインと言ってしまいました。そう、シャンパーニュはスティルワインとは異なります。何処がと尋ねられ、発泡性と答えるのは正解ですがナイーヴな感じ、白・ロゼはあるが赤シャンパーニュは無いと答えるのはまずまず。期待される答えはノン・ヴィンテージが基本ということです。NVと書き、通は「ノンヴィン」と言います。スティルワインでヴィンテージが無いのは通常、最も安価なテーブルワインくらいで、千円以下で買えるチリワインにもヴィンテージは入っています。とりわけ銘酒にとってヴィンテージは重要で、年ごとにワインの出来不出来があり、価格も大きく変わってくるのです。それに対し、シャンパーニュはいつ飲んでも同じ味であることが基本になります。そこで、違った年のワインをブレンドして味を調整してから、瓶の中で二次発酵させ、発泡酒に仕上げるのです。どの作り手の味が好きかという選択を楽しむのです。例えば、「(ヴーヴ)クリコはちょっと酸が強いので、自分はボランジェが好き」とか。この作り手、ボルドーでは「シャトー」、ブルゴーニュでは「ドメーヌ」、シャンパーニュでは「メゾン」と呼ばれるのが通例です。そして、贔屓のメゾンを見つけ、特別な日にはワンランク上のヴィンテージの入ったシャンパーニュを開けるのが通。ボランジェであれば、「グランダネ(偉大なる年の意)」以上の銘酒になります。では、何故シャンパーニュ地方は発泡酒を造ることになったのでしょう。それは使われている葡萄を見ればわかります。シャンパーニュは、シャルドネ、ピノ・ムニエ、ピノ・ノワールの三種の葡萄をブレンドして造るのが基本です。そう、シャルドネ、ピノ・ノワールがブルゴーニュと被ってしまっているのです。スティルワインではブルゴーニュに敵わないので、発泡酒に活路を見出した。その元祖がドン・ペリニヨン師(伝説)という訳です。そして、三種のブレンドを軸として、シャルドネだけで作られた酸の効いた爽やかな「ブラン・ド・ブラン(白の白)」、ピノ・ムニエと(あるいは)ピノ・ノワールの赤葡萄だけで造られたコクのある「ブラン・ド・ノワール(黒の白)」というヴァリエーションがあります。果皮を取ってしまうので赤葡萄(黒)で造っても透明なシャンパーニュ(白)が出来るという訳です。また、実は本来、シャンパーニュでは八種類の葡萄を使うことが許可されていて、この八種類全部を用いて伝統的なシャンパーニュを造る「L・オブリ・フィス」が人気を博し、上記三種以外の葡萄を用いる造り手も増えてきていることを記しておきましょう。では、最後にシャンパーニュの奥深い世界を垣間見させてくれる尺度をお教えしましょう。それは「糖度」です。瓶の中で発泡酒となったシャンパーニュは最後に「デゴルジュマン」と呼ばれるオリ抜きをし、目減りした分に「ドザージュ」と呼ばれる糖分添加をして最終的な味の調整を行います。通常、供される「ブリュット」は辛口という意味ですが、それでも一リットル当たり15g以下の補糖が為されています。昨今は辛口が流行のようで、まったく補糖していない「ブリュット・ナチュール(自然のままの辛口、ノンドゼ、ブリュット・ゼロなどとも呼ばれます)」は3g以下。そこから、50g以上という一番甘い「ドゥー」まで七段階の規定があります。シャンパーニュ愛好家ともなるとメゾンの違いはもとより、この「甘さ」の違いがわかることが必須のようです。とりわけ、珍しくなってしまった「甘口」のシャンパーニュに魅了されるようで。筆者の如き、赤ワイン党には近づきがたい境地に達していらっしゃる。かくも深淵なるシャンパーニュ。ワインの世界は底知れない魅力にあふれています。今月のお薦めワイン  新年を祝うシャンパーニュ「プルミエクリュ キュヴェ ブラン・ド・ノワール NV ドメーヌ・ゴネ・メドヴィル」 6900円(税抜)ブルゴーニュの赤好きの筆者はやはり、シャンパーニュもピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールを選んでしまいます。通常の三種混合のもの(このメゾンでは「トラディション」と命名)より色は黄色がかり、味もシャルドネの酸がない分、コクを感じることでしょう。飲みごたえのある仕上がりです。今回選んだのは、メニル・シュール・オジェの有名メゾン、フィリップ・ゴネ家の御子息とボルドーはソーテルヌのこちらも有名シャトー、シャトー・ジレットのメドヴィル家の御令嬢が結婚され、2000年にヴァレ・ド・ラ・マルヌのビスイユ村に設立したメゾンのもの。もちろん、レコルタン・マニピュラン(RM、自分の畑で栽培した葡萄のみでシャンパンを造るメゾン)。実家のフィリップ・ゴネはブラン・ド・ブランで有名ですが、こちらはどちらかと言うとピノ・ノワールに力を入れている様子。ブラン・ド・ブランはグランクリュのみ。ブラン・ド・ノワールはプルミエクリュ、グランクリュ両方で造っています。最先端の醸造施設で造られるモダンなシャンパーニュを手頃な価格で楽しめる逸品。購入先はこちらのAVICOオンラインストアまで略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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