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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第12回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第12回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと映画「アンタッチャブル」を観た何回も観ている映画ではあるものの最後まで観た年齢を重ねるたびに見どころ満載な点に改めて気づいた禁酒法時代のアメリカ腐敗と汚職にまみれた行政と警官とアル・カポネに支配された街シカゴこの街に派遣された財務省の役人が味方の見えない中で悪というものに挑んでいく物語主役級のスタイリング全般はジョルジオ・アルマーニが担当財務省の役人として主役を務めるケビン・コスナー正義を貫くがために出世が断たれたベテラン警官ショーン・コネリー教科書通りの言動にはまらないため新人警官ながら仲間に抜擢されるアンディ・ガルシア禁酒法時代に暗躍した実在のマフィアのボス役としてロバート・デニーロこのキャスティングだけでもおなか一杯な感があるもののそのスタイリングの良さに改めて気づく ケビン・コスナーの役人らしいスリーピーススーツスタイル元来スーツというものは三つ揃えではじめてスーツと成すとか警官として活動の幅が広いアンディ・ガルシアのドレスダウンスタイルクライマックスを迎える法廷シーン勝訴を確信して笑みさえ浮かべるロバート・デニーロのブラックスーツスタイル転じて有罪が確定する場面での白に近いライトグレイのスーツと黒のソリッドタイそれぞれに深い意味を持たせたながら美しくスタイリングされた数々の場面しかし、ショーン・コネリーだけは自前の衣装だったらしい摘発のための仲間に誘われケビン・スナーに会いに行く場面のジャケット国境をまたいだ密輸を摘発に向かうシーンのニットとブーツ(このシーンは誰も彼ものスタイリングが素晴らしいので必見かと、とくに乗馬シーン…)すべてに被る帽子の数々 そういえばある男が口止めのための賄賂をもってオフィスに訪れるシーンその男は帽子も取らずートも脱がず、反対に迎える彼は上着を着ようともする英国的には男が室内で帽子を取るのは敵意がない証拠を表すものらしいが ギャング仲間の会食シーンアル・カポネの話が終えるまで待つ男たちひとり葉巻に火をつけて煙をまき散らす男の裏切りと敵対心を象徴密売酒の摘発に成功した夜の会食シーン各々が同じ葉巻をそれぞれに持ち一緒に火をつける祝いの葉巻細部にわたり演出が施された興味深い内容は男の作法的なものを学ぶ良い教材のひとつかとそういえばこの映画で脚光を浴びたアンディ・ガルシアの暑苦しいほどの眼光他にもブラックレインでの警官役、ゴッドファーザーⅢでの時期マフィアのボス、オーシャンズシリーズなど日本国内で話題になった映画だけを観ても両極端な配役はその眼光からかもルールとモラル、行政と市民、腐敗と汚職、正義と悪、そして家族勧善懲悪と言い切ることが出来ない様々な要素があることに改めて気づかされる映画「UNTOUCHABLE」そのタイトルにすらセリフに留まらない深い意味があるような、ないような映画の最後に脱税容疑のみの有罪で懲役刑を確定させ喜びにあふれる役人新聞記者からの禁酒法自体廃止になったことをあわせた質問にひと言「大いに飲むよ」時代と場所と場面を置き換えて考えてみることもしたくなる今日この頃 美しく秋深まる夜更けにCannonball Aderley/Somethin'ElseよりAutumn Leavesでも聴きながら禁酒法の時代に生まれたノンアルコールカクテル「フロリダ」でもいかがかと令和3年10月吉日酒番 栗岩稔 栗岩稔プロフィール 「鎌倉THE BANK」「 銀座7丁目サローネ」「木挽町 bar sowhat」「銀座Sony Park Bar Morita」で大人の集う酒場を作り上げ、「人」と「酒」と「酒場」をその歴史や文化から掘り下げ伝えていく。唯一無二、フリーランスの「酒番」として活動。 2021年夏よりWAH!radioパーソナリティ○Ginza Sony Park https://www.ginzasonypark.jp/○WAH! Radio https://wahradio.org/ 栗岩稔  FACEBOOK 〇お知らせ 6月中旬よりインターネットラジオ局 WAH ! RadioにてJazを中心として映画や本、旅など多岐にわたり、 選曲家で音楽ライター 大塚広子、垣畑真由の二人と語るカルチャー番組がオンエア中 ぜひお耳にかかれますように。 WAH! Radio www.wahradio.org...

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『酒番日記』イベント「誂え服と昭和のハイボール、その時代」開催のお知らせ

『酒番日記』イベント「誂え服と昭和のハイボール、その時代」開催のお知らせ

1960年代高度成長期を迎えた昭和 過度に達するまでのその時代 現在のように多種多様のウイスキーがないころの酒場 ウイスキーをより旨く、香り高く味わうためのウイスキー&ソーダ 勝手に命名「昭和のハイボール」 大量生産大量消費の時代 既製のモノを買い、使い捨て、葬り去る その忘れ去られた、ひとりひとりのために誂えるということの意義 銀座のオーダークロージングサロン「The Cloakroom Tokyo」にて語り合えたら幸いです。 「誂え服と昭和のハイボール、その時代」 日時:10月17日日曜日午後3時より午後5時まで 参加費:5000円(税込) 10名限定 ※未成年者不可※感染防止対策徹底の上開催 参加申込、お問い合わせはメールにて承ります info@thecloakroom.jp 以上、お目にかかれましたら幸いです。栗岩稔追伸、酒もまたひとつひとつ誂えるものだと、思う。型どおりではなくて。 酒番 栗岩稔 プロフィール : 木挽町路地裏の伝説の名店 bar sowhat を終え、新たなステージで日々、人と酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。2021年夏よりインターネットラジオ局 WAH! Radio にて番組パーソナリティーとして参加するなど多岐にわたり活動。現在は、銀座ソニーパーク地下4階で期間限定のBar Moritaにて酒番を務める。○Ginza Sony...

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『美食通信』第十回「羊羹好き」

『美食通信』第十回「羊羹好き」

 旅の土産に何をよく買われるでしょうか。もちろん、出かける場所の名物ですのでそれぞれ異なることと思います。国内と海外では全然違うでしょう。食べ物じゃないかもしれません。でも、例えば、台湾であればパイナップルケーキが定番の一つではないでしょうか。筆者は台北に出かけるとオークラプレステージ台北のパティスリーに必ず寄って、パイナップルケーキをお土産に買います。そう、スイーツはやはり旅の土産に最適ではないでしょうか。ただし、ある程度日持ちのするものでないと困ります。ですから、パイナップルケーキが選ばれるのでしょう。  さて、筆者は毎年、九月初めに二泊三日の旅行に出かけるのを常にしております。ですので、今年は当初、このコロナ禍もオリンピックの前には一段落しているのではないかと思い、昨年台北に行くことが出来ず、静岡に出かけましたので、今年はソウルに行きたいと思い、ホテルを早々に予約しておきました。ところがどうも雲行きが怪しいというか、好転するどころかどんどん悪くなる一方で、六月に入って早々にソウルを諦め、ホテルの予約を解約し、国内旅行に切り替えることにしました。では、何処に行こうかと考えた時、すぐ思いついたのが長野県の松本と諏訪にそれぞれ一泊する旅でした。  昨年の静岡は筆者の今は亡き両親の故郷、静岡市に出かけるのを目的としました。筆者は転勤族の父の仕事の関係で東京生まれ。一度も静岡に住んだことがありません。両親共に亡くなってから静岡を訪れることがなかったのでちょうどよい機会だ、と。また、レストラン格付け本『ゴ・エ・ミヨ』日本版で静岡市に「カワサキ」という優れたフレンチが開店したというではありませんか。これは行かずしてどうしましょう。  そして、今年は筆者が三歳から十歳までの七年間を過ごした上諏訪に出かけたいと思ったのです。住んだことはないが筆者のルーツである静岡。そして、幼年期を過ごした諏訪へと人生を振り返る旅を続けようと。また、「カワサキ」が掲載された『ディスカバー・ジャパン』誌(2021年5月号)に浅間温泉の旅館をリノベした「松本十帖」が掲載されており、ブックホテルの「松本本箱」に泊まり、そのメインダイニング「三六五+二」でコペンハーゲンの「noma」の影響を受けたクリストファ―・ホートン氏の監修する「信州ガストロノミー」を堪能したいと。もちろん、諏訪時代、両親と浅間温泉を訪れたことがあったものですから。  さて、静岡、諏訪と一見土地柄としてはかけ離れている場所に赴いたのですが、土産に買ってきたのは共に「羊羹」だったのです。筆者にとって、静岡の思い出の甘味と言えば、まずは母の実家の近く安倍川橋のたもとある元祖「安倍川もち」の石部屋(せきべや)です。祖父に連れられ、従弟たちと安倍川べりを散歩して、石部屋に寄って安倍川もちを食べて帰るのが慣わしでした。昨年訪れた際も佇まいは変わらず、土間に上がって食べる畳席もそのままでした。ただし、筆者は安倍川もちが苦手で(とりわけ、きな粉をまぶした方は口がパサパサになってむせてしまうので)、好物はもちを白玉状に軽くつぶし、ゆで汁の中に浮かべて供し、わさび醤油で食する「からみもち」。表面がやや溶けて、もちそのものの甘味がわさび醤油で引き立つのは絶品と言わざるを得ません。残念なことに土産用の安倍川もちでさえ賞味期限は当日中で、からみもちは持ち帰り出来ません。  では、何を土産に買うのかと言えば、「追分羊かん」です。旧東海道の清水と静岡の間に「追分」という地名があり、その街道沿いに今も古びた追分羊かんの本店があります。いつもは駅の売店などで買っていたのですが、最近は車で出かけ、街道沿いをさらに少し進んだ所にある「芳川」という料理屋で鰻を食するので行き帰りのどちらかに追分の本店に寄って買うことにしています。「芳川」も清水次郎長、西郷隆盛の訪れたことのある由緒ある店ですが、「追分羊かん」は一六九五年創業という大変な老舗。駿府に隠居した徳川慶喜、清水次郎長も好んだと言われ、清水出身の漫画家さくらももこさんの好物でもあった名物です。 竹の皮に包まれた弾力のある独特の食感の羊羹は、羊羹にうつった竹の皮の香りや味が実に美味で筆者も子供の頃から大好きでした。近年は真空パックになっているので日持ちも良く、家に帰ってから毎朝適宜切り分け一切れずつ食すると、羊羹と言えば、筆者にとっては追分羊羹のことなのだとひしひしと感じる次第です。  一方、今年の松本・諏訪への旅でも何故か土産は羊羹でした。それは下諏訪の諏訪大社下社秋宮の隣に店を構える「新鶴(しんつる)」の「塩羊羹」です。明治六年創業の新鶴は塩羊羹の元祖と言われています。餡を固めるのに用いるのは地元茅野産の天然寒天という諏訪の地ならではの銘菓。これも、諏訪に住んでいた頃、よく食していました。もう半世紀以上前になりますので、当時は洋菓子もまだ珍しく、児童文学者、大石真の『チョコレート戦争』(1965年)を買ってもらい読んだ筆者は洋菓子に多大な憧れを抱いていたくらいです。父が買って帰るそのような洋菓子のお土産と共に、ちょっと贅沢なお土産だったのがこの塩羊羹でした。不思議だったのは羊羹というのに色が灰色がかっていること。そして、その名の通り、甘さの中に漂う絶妙な塩味でした。寒天を用いているので食感は追分羊かんとは対照的にしっかりとしていて噛み応えのある重量級。しかし、味は軽やかで甘味が抑えられているので案外たくさん食べられてしまうのです。色が小豆色ではないのはあく抜きのため小豆の表皮を全部取り去って用いているからだそう。  生まれて初めて「新鶴」本店に出かけました。ここもまた鄙びた店構えで神社の脇ということもあり、何とも風情がありました。コロナ禍で人もまばらで快適でした。こちらは夏ですと五日くらいの日持ちです。これは帰宅の翌日から毎朝一切れ、五日で食べ切りました。  筆者の人生にとって意外にも「羊羹」は重要な美食であり、「羊羹好き」だったのかと実感した次第です。   今月のお薦めワイン 「辛口白ワインの代名詞 シャブリ」 「シャブリ テロワール・ド・ベル 2017年 シャトー・ド・ベル」 5500円(税抜)  「シャブリ」という名はもしかすると辛口白ワインの代名詞かもしれません。「生牡蠣にシャブリ」。酸がしっかりしているので殺菌にもなるなどと言われたものです。実は、「キンメリジャン」という牡蠣など貝類の化石からなる石灰質の土壌からシャブリは産まれますので余計に牡蠣が連想されるのでしょう。ところでシャブリはシャルドネから造られます。そう、シャブリはブルゴーニュワインなのですが、その場所はブルゴーニュの心臓、「コート・ドール」でもなければ、デジョンからリヨンにかけてのいわゆるブルゴーニュ地方にもありません。北西にある飛び地のヨンヌ県に存在し、「葡萄の孤島」と呼ばれることもあるようです。石灰質の土壌はミネラル分に富み、ですので酸が際立つのは酸に金属的なニュアンスが加わるからと考えるとよいでしょう。また、キンメリジャンではない土壌から造られる「プティ・シャブリ」という若飲みのよりフルーティーな手頃な価格のワインもあります。シャブリ自体もグランクリュまでピンからキリまでといった感じ。発酵はステンレスタンクかガラスコーティングのセメントタンクで行われ、熟成に樽が用いられます。高級なものほど樽のかかった感じに仕上がります。ですので、酸の効いた果実味+ミネラル感がベースで樽がけが+αという味わいです。  今回ご紹介するシャトー・ド・ベルはシャブリの東に位置する人口六十名ほどのベル村の当主一族が造るワイナリーです。その歴史は四百年を超えるということですが、現在のスタイルは2005年にシャトーを受け継いだアテネ女史によるビオロジックな自然派のワインとなっています。2017年ヴィンテージは酸、ミネラル、樽感が絶妙なハーモニーを醸し出し、シャブリにしては柔らかな仕上がりになっています。一部にしか出回っていないものですので、この機会に是非。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第11回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第11回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 銀座の公園で骨董市を見た元来、古い物に興味を持っていなかったが20年前に出会った先輩方の影響で好きになり、学んだその骨董市には当時出会い同じ目線で影響を受け年を重ねた男たちがそれぞれに軒を並べてそこにいた皆が格好良かった、とても自身も好きなことに絞って生きてきた、ように思う酒場、音楽、映画、本に服、そして美しいモノ好きなことや気に入ったモノに囲まれていれば厭なこと、苦しいこと、嫌いなこと、怖いこと何があっても苦にならない、と思うただただ、好きなことやモノだけを集めただけではダメだとも思う足を運びそのモノを見極める眼、感じる手、知識手中の電子機器から投げつけられる情報だけではわかるはずもなくその手触り、手心地、カタチ真面目に向き合い対峙したその瞬間にはじめて得られるそのモノとその意味感じられる美と愛おしさそれはモノでも音でも画でも文字でも同じかともしかしたら人も、かも人もモノも、そのご縁は大切に咄嗟に思い立って映画を観た「トラップ・ファミリー合唱団物語」を原作としたドイツ映画「菩提樹」それを原作として、ロジャース&ハマースタインのコンビでニューヨーク・ブロードウェイでミュージカル化された「サウンドオブミュージック」そのミュージカルをさらに同名で映画化「サウンドオブミュージック」1938年、ナチスの侵略迫るオーストリア厳格なトラップ家のもとへと修道院長の命を受けて家庭教師としてやって来た自由奔放な修道女マリアその温かい人柄と音楽を用いた教育で心を閉ざし教えを守る子供たちが心を開き合唱団を作るまでになる映画その中ではじめて子供たちと打ち解けるシーン夜の嵐を怖がる子供たちと好きなものを思い浮かべ共に唄う「My FabouriteThings」その後さまざまな時代の波に翻弄されるトラップ家の人々戦時中のオーストリアの情勢が色濃く描かれた「サウンドオブミュージック」をその後のトラップ家の行く末を知りたい方は「菩提樹」を是非ご覧あれもちろん、原作「トラップ・ファミリー合唱団物語」もご一読を骨董市を終えたその夜銀座の公園の酒場で再会したその場にふさわしい器をかわす男たち皆が良い顔をしていた今宵、秋雨の気配を感じる夜にSarah Vaughen/After Hours より My Favorite Things を令和3年9月吉日酒番 栗岩稔 プロフィール : 木挽町路地裏の伝説の名店 bar sowhat を終え、新たなステージで日々、人と酒を通して時間を提供する傍ら、ブランドマーケティング業、服飾業等の経験から事業提案、イベント企画運営、パーソナルスタイリング業も行う。2021年夏よりインターネットラジオ局 WAH! Radio にて番組パーソナリティーとして参加するなど多岐にわたり活動。現在は、銀座ソニーパーク地下4階で期間限定のBar Moritaにて酒番を務める。○Ginza Sony Park https://www.ginzasonypark.jp/○WAH! Radio https://wahradio.org/

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『美食通信』第九回「昼ワインのすすめ」

『美食通信』第九回「昼ワインのすすめ」

『美食通信』第九回 「昼ワインのすすめ」  東京は緊急事態宣言下にありながら五輪に浮かれ、感染拡大は五輪終了後にも収まらず、果たしてどこがピークなのかもわからない状況。酒類の提供は禁止され、時短営業はいつまで続くことやら。しかし、五輪が始まる前の一時、開催を正当化するためなのか知りませんが、規制が若干緩和されました。時短営業は変わりませんが、人数・時間を限って酒を出してよいとか。外は、例年増す暑さ本番といったところ。そんな時は、涼しい店で眩しい日差しを眺めつつ、昼ワインなどしたくなるものです。コロナでなければ正々堂々飲めるのですが、別に規則違反でないのに何となく後ろめたいような気持ちになるのが残念。  筆者の住む街は「まん防」の対象区域で、二人までで九十分以内なら酒の提供は可能でしたので、待ってましたとばかり、近くに住む高校の同級生のH氏と隣駅前にあるイタリアン「di Formaggio KURA6330 」へ。船橋にある牧場の経営するイタリアンで、自家製チーズ、地産地消の野菜を使った料理がなかなかの美味。ランチはコースが基本ですが、ワインを飲むのでアラカルトでよいかと尋ねたら、快く了承して下さった。有難い。「昼ワイン」のポイントはがっつり食べるのではなく、あくまでワインを楽しむことが目的。そこで、アンティパストの盛り合わせと自家製チーズを頼んで、ワインに興じることに。もちろん、最後のドルチェは忘れずに。  さて、ワインは何にしようか。筆者は基本、赤ワインしか飲みませんので、昼といえば、重すぎず、かといって、イタリアワインの特徴の酸が目立つのも厳しいか、と。日本ワインもありましたが、やはり店で飲むと一万円超えで気軽ではなくなってしまいます。そこで面白いものを見つけました。ピエモンテの赤ワインなのですが、ネッビオーロでもなければ、ドルチェット、バルベーラでもない。ブラケットというブドウ品種のワイン、「アックイ」というDOCG(産地呼称)を名乗っています。通常、アックイのブラケットは「ブラケット・ダックイ」というDOCGで発泡性のワインが造られています。前回、伊香保で登場した「ランブルスコ」のようなワインです。ところが一か所のワイナリーだけ、通常の赤ワイン(スティルワイン)をダックイで造っているそうです。「ソシエタ・アグリコーラ・ボット」という造り手です。店で飲んで6000円ほどでした。  ブラケットは色が薄く、イチゴの香り、酸は柔らかでフルーティーなワイン。ブルゴーニュをアバウトにしたような感じ、「ブルゴーニュもどき」と勝手に呼ばせていただいております。実はピエモンテには他にも「ペラヴェルガ」というローカルなブドウ品種があり、これも「ブルゴーニュもどき」のようなワインが造られています。こちらはDOC「コッリーネ・サルッツェージ」のエミディオ・マエロによるワインをアヴィコさんで購入することが出来ます。イタリアの赤ワインはネッロ・ダヴォーラやプリミティーヴォといった南のブドウの濃厚な果実味か、キャンティのようなはっきりした酸のどちらかに思われがちですが、ピエモンテはバローロ、バルバレスコが造られるネッビオーロに始まり、ブルゴーニュに比肩するユニークなワインが多々存在します。マイナーなブドウ品種を押さえておくのがコツと言えましょう。値段は手頃なものばかりですので。  「昼ワイン」はのどかな郊外の住宅地のみでなく、都市のど真ん中で行なうのも乙というもの。筆者はソウルや台北で「昼ワイン」するのが好きです。フレンチでも日本に比べディナーのボリューミーさは相当なものなので、昼にワインはしっかり飲むものの、食事は控えめにしておく必要があります。特にソウルは。印象に残っているのは、2014年にソウルに出かけた際、「アスリーヌ」での昼ワインです。アスリーヌはパリにあるグラフィック本など高級書籍出版社で、江南にカフェ付きの支店を出していました。ソウルは江南のお洒落なカフェに行けば、何処もワインリストを用意しているくらいワインが普及しているのですが、フランスワインとなるとまだ心もとない店が多く、アスリーヌなら大丈夫だろうと出かけた次第です。カフェに入り、ワインリストを所望しました。テーブルには手頃なイタリアワインの紹介のポップが。すると、ボルドーはサン=テステフの第四級、シャトー・ラフォン=ロシェの2007年が載っているではありませんか。もちろん、昼飲むにはお高いのですが、もうこれしかない、と。注文すると店の人がこれでよろしいのですか、と再確認するほど。いいんです。ここはパリの書店のカフェなのですから。  といいつつ、食べ物はラザニアと野菜がないのでシーザーサラダを二人でシェア。案の定、韓国サイズ?で、最初に出てきたサラダが二人でも食べきれないくらいボリューミーで、これで一人分?と疑うくらい。ワインが主役なのでサラダは合わないなあ、と思いつつ、ラフォン=ロシェを飲むも、これが実に美味しい。自分の中でラフォン=ロシェは美味しくないワインの一つでしたので、代変わりしてスタイルも変わったのね、と。以前はギスギスしたタンニンが喉に絡みついたのですが、今やスムースで果実味もしっかり感じられるではありませんか。そうする内に、お出ましのラザニアも同様に食べきれないサイズ。ワインには合いましたが。まあ、つまみみたいなものですので残すことは気にせずに。  そして、ここからが韓国風サーヴィス。何となく、食べる手が止まりだした頃、フルーツの盛り合わせがこれもビッグサイズで登場。もちろん、頼んでいません。お店からのサーヴィスです、と。これはそれまでも何度か体験したことがありました。昼時にカフェに出かけ、ボトルでそれなりのワインを頼むと何かサーヴィスで出てくるのです。多くはフルーツの盛り合わせ。「アスリーヌよ、おまえもか」。そう、確かにここはソウルなのですから。  「昼ワイン」には思いがけない喜びもあるものです。是非、お試しあれ。   今月のお薦めワイン 「イタリアワインの最高峰 バルバレスコ」 「バルバレスコ リゼルヴァ 2013年 マイネルド」6900円(税抜)  ジビエに合うフランスワインとしてブルゴーニュの「ポマール」をご紹介し、イタリアにもそれに匹敵するワインがあるということで、ピエモンテの「ゲンメ」をご紹介しました。ポイントはピノ・ノワールに比肩するネッビーロという葡萄品種でした。ただし、ポマールがコート・ドールでも白に銘酒の多いボーヌ産という変化球であり、王道はニュイのワイン、そこで「モレ=サン=ドニ」を前回紹介させていただきました。ということで今回は、ネッビオーロの王道「バローロ、バルバレスコ」から「バルバレスコ」を紹介させていただきます。「ゲンメ」がピエモンテ北部であるのに対し、両者は南部のアルバ地区で造られています。「バローロ」が「ワインの王であり、王のワイン」と呼ばれるのに対し、法定熟成期間がやや短く、ダイナミックな力強さこそバローロに及ばないものの、バルバレスコは繊細さとバランスという点で優れていると言われています。バローロがブルゴーニュにおける「ヴォーヌ・ロマネ」であれば、バルバレスコは「ジュヴレ=シャンベルタン」に相当すると言えましょう。 今回ご紹介するバルバレスコは「リゼルヴァ」と熟成期間の長いワンランクの上のもの。法が定めるには樽と瓶で四年以上熟成させるのですが(バローロは五年以上)、今回の造り手、1920年設立のマイネルドは樽で五年熟成させ、さらに瓶熟させています。また、自然酵母、樫の大樽を用いるなど伝統的な醸造方法で格調高いワインを造る優れた生産者です。まだまだ寝かせることも可能ですが、熱い夏を乗り切るのにさっぱり、あるいはシンプルに美味しいお肉を食される時などにピッタリだと思われます。是非、お試しあれ。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第10回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第10回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと    「炎のランナー」を観た 邦題は「炎のランナー」原題は「Chariots of Fire」 ウイリアム・ブレイクの序詩からの抜粋で 旧約聖書のなかの「炎の戦車に乗り地上を見下ろす」からの一節とのこと 若い時に観たスポーツの感動の映画とは違った何かを感じる イギリス権威主義、階級意識、民族意識、宗教観など、たくさんの要素を   熱心な布教活動を行うスコットランドのリデル、金融で財を成した一族出身のユダヤ人ハロルド 二人の100メートル走をめぐる戦い、大英帝国の代表としてオリンピックに出場する実話をもとに 描かれているものの、民族的な偏見や差別を色濃く描いている部分を見直すことが出来る   リデルが剛健なキリスト教という訳でセリフにも読み取れるスポーツを通して体現する布教活動を終え 帰国した彼のもとに集まる子供たちとラグビー選手としてもヒーローの彼が走る姿 シャツのカラーを外し、ツイードの上着を脱ぎ、子供たちはツイードの上下で半ズボン   場面が変わってロンドン ケンブリッジ大学への入寮を控えたハロルド 戦後のロンドン市内で明らかに階級の違う男たちに荷物を運ばせ、タクシーで向かう その大学構内でのスクールカラー、ニット、マフラー、帽子など細部にわたる服装で表現する時代 ツイード生地、クレリックシャツ、スクールカラー、シャツ、ニット、帽子本来の意味を知る上でも必見かと   セレモニーを終えたハロルドがチャレンジする伝統行事 上質のコートを羽織り同走を申し出る貴族階級の男性の手にはシャンパン、片方の手には葉巻 一方のハロルドは下着のようなランニングウエア   二人を上から見つめる学長らしき人物のセリフ「金融の一族出身で云々」これだけでも計り知れない...

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『美食通信』第八回「伊香保の夜はふけて」

『美食通信』第八回「伊香保の夜はふけて」

『美食通信』第八回「伊香保の夜はふけて」  リゾートが苦手。温泉も然り。そんな筆者が例外的に年に一度、伊香保温泉に足を運んではや十年近く。来年で十回目だったのが、昨年コロナで中止になり、今年はどうなるか、と。宿は「ホテル木暮」。実は若女将夫妻が筆者のワイン仲間で、「ワイン合宿」と称して始めたのがきっかけ。S弁護士事務所でのワイン会の際、酔った勢いで誰かが泊りがけでワインを飲もうと言い出し、その場で伊香保に電話することに。故三笠宮殿下のお泊りになられた貴賓室が最上階にあると聞き、貴賓室じゃないと行かないと駄々をこね、なんとか阻止しようと試みるもあっさり要求が通り、実現に至る。幹事はS弁護士。その貴賓室も昨年、全面改装し、行くのを楽しみにしてたのですが中止に。今年は土日だけ営業するので是非お越し下さいとの若女将の鶴の一声で出かけることに。  とはいえ、時期が時期でメンバーも大人というか、重症化しかねない年齢に近づいていますので辞退される方も。かく言う筆者は最年長で持病持ちですので他人ごとではないのですが、ここは副幹事で気配りの社労士、Wさんがプラズマクラスター空気清浄機を二台搭載された自家用車で拙宅まで送迎して下さったり、例年なら若女将夫妻が泊まられる貴賓室隣の特別室も我々が寝室として使わせていただくなど万全の感染対策で安心して出かけることが出来ました。また、この『美食通信』の主宰、The Clockroomの島田さん、歌舞伎町を代表する実業家、手塚マキさんも参加下さり、人数的には若女将夫妻を含め、全八名と一本のワインをテイスティングするにはちょうど良い人数となりました。結果、メンバーが若返ったせいもあってか、八名で十五本のワインをテイスティングすることに。近年、酒量が減っていたこの会で嬉しい誤算でした。  この会のワインの供し方は三段階。まず、ウエルカムドリンクあるいはアペリティフ(食前酒)に相当するもの。食事が18時からですので、皆さん、その前にチェックインして、大浴場を堪能されます。もちろん、筆者は一度も大浴場に行ったことはなく、部屋でのんびりテレビを観るか読書。改装前、貴賓室には部屋の真ん中にジャグジーがあったのですが筆者以外どなたも入られたことがなく、筆者の独占状態でした。皆さんが床に就かれ、最後に一人残った筆者は七色に光るジャグジーに入って寝るのが常でした。ともかくも大浴場から帰られたところで、お決まりのランブルスコを開けます。銘柄も決まっていて、サッカーの中田英寿氏がプロデュースした唇のマークが印象的なエチケットの「ヴァーチョ」(キスの意)。パルマのあるエミーリア=ロマーニャ州のワインです。色が濃く、葡萄の果実味いっぱいの微発砲。アルコールは弱めで「ヴァーチョ」は11%で高い方。一ケタのものもあります。まさに入浴後の「ヴァン・ド・ソワフ(渇きを癒すワイン)」の役割。ちなみに、インポーターはこの「美食通信」のワインコーナーでお世話になっているABICO(アビコ)さんです。御贔屓に。  次に食事の際に当然ワインを出します。グループごとの個室での会食で、若女将夫妻も一緒に食事され、この後の部屋に戻ってのワイン会の前哨戦といったところ。部屋では基本、ヴィンテージ物の赤が主役に。温泉旅館のご馳走ですから、食材、調理法、味付けなども多岐にわたります。ですので、それ以外の若めの赤、白、シャンパーニュなど他のすべての種類のワインを食事の際に供します。食事に合う気軽なものが相応しいのですが、毎回例外として、シャンパーニュ好きの若女将夫妻から乾杯用に高級シャンパーニュが。今年はテタンジェのコント・ド・シャンパーニュのロゼ2007年と垂涎の逸品。いつもありがとうございます。ここまでで八本、空きました。  さて、この後部屋に戻ってのワイン会こそ、この集まりのメインイベント。だいたい恒例としてボルドーのヴィンテージ物を持ち寄って開けることに。今年はメインが第一級のムートン=ロートシルト(ポイヤック)2000年でしたので、この前後のヴィンテージのものを。筆者がブルゴーニュのオスピス・ド・ボーヌのポマール2003年、他に第三級のカロン=セギュール(サン=テステフ)2000年、同じ三級のパルメ(マルゴー)1993年をまず、テイスティングしました。ポマールはブルゴーニュの中でもタンニンのしっかりした濃厚な味わいのものですのでボルドーに負けない存在感がありました。2000年は大変良い年でしたので、ムートンは見事な出来でまだまだ長持ちしそうです。開けてすぐはギスギスして厳しいものがありましたが、時間と共に柔らかくなりまた味わいも深みとバランスが取れてきました。それに対して、カロン=セギュールは開けた途端に香りがはっきり感じられ、飲み頃だとすぐわかりました。実際、最後まで、ややくすんだ重みのあるサン=テステフらしい複雑な美味しさが変化しつつ持続していました。パルメはマルゴーでもエレガントなタイプのワインですので、93年という平均的なヴィンテージでは30年近く経つのですでにやや峠を越え、熟成感を楽しむものであり、後半やや酸が目立つようになっていました。  さらに比較のため、若いヴィンテージのグランヴァンを開けてみました。2016年のペロ=ミノのジュヴレ=シャンベルタン、2011年の第二級ピション=ラランド(ポイヤック)、そして2014年のクラランス・ド・オー=ブリヨン(第一級オー=ブリヨンのセカンド)の三本でした。ジュヴレはまだ若く、熟成感ではなく果実味を楽しむものでした。ピションはちょうど最初の飲み頃を迎えているようで、果実味とタンニンのバランスも良く、元々エレガントなタイプのポイヤックですのでしなやかな美味しさを感じました。クラランスはこれも上手に造られていて立派なものでした。ただ、やや化粧が強く、わざとらしさを感じました。それはアルコール度数が14.5%とボルドーにしては高すぎる点に明白です。グラーヴとはいえ、メドックのワインですのでいくらメルロの比率が高くとももう少しタイトでタンニックなものを期待したいと思いました。  このようにそれぞれのワインを比較しながら飲み比べていくと楽しみつつも多くのことを学ぶことが出来ます。気が付くと、最初のランブルスコから八名で十五本のワインが空いていた次第です。各自自分のペースで床に就いてゆき、今年もまた最後一人残った筆者は改装によって新しく設置された部屋の展望風呂に入って就寝しました。サウナも部屋に新設されたのですがそちらは12時までだそうで、もうとっくに終わってしまっていたので入らず仕舞いでした。まあ、二十四時間OKでも筆者は入らないと思いますが。皆さん、楽しんでいただけたようで良かったです。来年は十周年ですので、きっと今年以上の素晴らしいワインが並ぶことでしょう。島田さん、これに懲りずに来年もどうかよろしくお願いします。   今月のお薦めワイン  「ニュイの目立たぬ実力派、モレ=サン=ドニ」 「モレ=サン=ドニ 2013年 ドメーヌ・ジャヴェ」 6800円(税抜) 第二回のワインでジビエに合うブルゴーニュということでポマールを紹介させていただきました。今回はそのヴァリエーション、というかブルゴーニュの赤の本筋はこちらということでニュイのワインを紹介させていただきます。ブルゴーニュは、北は飛び地のシャブリから南はボジョレまで南北に長い地方ですが、その中でコート・ドール(黄金の丘)と呼ばれる地域がブルゴーニュ最高のワイン産地。そのコート・ドールは北半分がニュイで赤主体、南半分がボーヌで白主体となっています。前回のポマールはボーヌでヴォルネと並ぶ赤の名産地なのですがある種の変化球。ストレートはニュイの赤となります。その中で有名なのはもちろん、ロマネ=コンティを産する「ヴォーヌ・ロマネ」。ナポレオンが愛したシャンベルタンを産する「ジュヴレ・シャンベルタン」。そして、文字通り、ニュイの語源、「ニュイ=サン=ジョルジュ」でしょう。しかし、その陰に隠れて実は偉大なワイン畑を有するのが「モレ=サン=ドニ」です。ニュイ=サン=ジョルジュにはグランクリュ畑はありません。それに対し、モレ=サン=ドニにはモノポールの「クロ・ド・タール」をはじめ五つものグランクリュ畑があるのです。村名ワインは果実味とタンニンのバランスが良く、ピノ・ノワールのストレートな美味しさを感じることが出来るかと思います。筆者の基本はデュジャックの安い方(ネゴシアン物)ですが、今回はモレ=サン=ドニに拠点を置く、マリー・テレーズ・ジャヴェをご紹介しましょう。グランクリュの「クロ・デ・ランブレ」の北側にモノポールの「クロ・ド・ラ・ビドード」を所有するドメーヌ。ビオロジックを実践し、丁寧な造りで、2013年は飲み頃か、と。日本ではあまり出回っていない造り手ですので貴重な一品です。まずは村名ワインからお試しあれ。 ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第9回

「酒番日記」映画、音楽、本、時々酒、のこと第9回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと   久しぶりの酒場にて またしても自身の過去を否が応でも振り返る 人生初のBARのこと、東京という大都会でのBARのこと   進学して間もない上京して3か月という若者二人がカウンターに座る 小さな声で 「ノンアルコールでお願いします」 思わず 「えっ?」という返事にさらに小さく 「僕らまだ19歳なんです」 見るからに緊張した面持ちの中の瞳を輝かせながらカウンターの端に座り 背伸びしたい丸まった背中の二人の前には 苦みと甘みのバランスが程よいカクテル「シャーリーテンプル」   真っ白で清潔感の溢れるシャツの襟を正しながらカウンターにたどり着くひとりの若者 「初めてなんです、どのように注文したら良いですか?」 聞けば23歳にして興味津々のBAR初体験の一杯は 日本生まれで世界発信したカクテル「バンブー」を少しだけ飲みやすく   少し前に23歳だった男性が距離の保たれた隣の席に座る 彼自身の路地裏の小さな酒場の体験を静かに語る彼の前には いつものお気に入りのカクテル「モスコミュール」 路地裏の酒場の3倍の長さがあるカウンターの端でグラスを磨きながら 心の中では「ありがとう」   丸い小さな灯りに引き寄せられた故郷の町の路地裏の懐かしく切ない記憶がよみがえる 重そうな扉に閉ざされたBARの文字 勇気を振り絞って押した先に広がる大人たちの空間 その気配に圧倒されながら戸惑い立ち止まる 偶然か必然かカウンターの端の一つだけの空席...

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衣装を制作させていただいた「江戸川乱歩短編集Ⅳ」の再放送が決定しました

衣装を制作させていただいた「江戸川乱歩短編集Ⅳ」の再放送が決定しました

衣装の製作をお手伝いさせていただいた満島ひかりさん主演のドラマ「江戸川乱歩短編集Ⅳ」がNHK総合で再放送されることになりました。 内容はちょっとマニアックですが、頑張って作ったので是非たくさんの人に観てほしい。っていうか観て! 江戸川乱歩短編集 NHK総合 第1回「怪人二十面相」7月12日(月)夜10時45分 第2回「少年探偵団」7月14日(火)1時14分(火曜深夜) 第3回「妖怪博士」7月17日(金)夜24時25分 NHKの紹介ページ「江戸川乱歩短編集」 衣装を制作させていただいたのは満島ひかりさん「白いセーラーカラーのスーツ」森山未來さん「金ボタンのブレザー」団次郎さん「ダブルのベスト」斉木しげるさん「チェックのスーツ」麿赤兒さん「グリーンのフロックコート」村杉蝉之介さん「赤い燕尾服」です。ぜひご確認ください。

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『美食通信』第七回『メゾン・ド・ヒミコ』への旅

『美食通信』第七回『メゾン・ド・ヒミコ』への旅

『美食通信』第七回『メゾン・ド・ヒミコ』への旅   昨年九月、久しぶりに亡き両親の実家のある静岡市に出かけました。父が銀行員でしたので、入行は静岡支店だったものの、筆者が生まれたのは東京。その後、諏訪、神戸と転勤し、筆者の高校入学のことを考え、東京に戻って、社宅のあった船橋の近くに家を建てた次第。典型的パラサイトシングルの筆者はその家から離れることなく、両親亡き後も住み続けているのです。筆者にとって、静岡は住んだことのない故郷という不思議な土地で、人生も終焉が近づいて来ましたので、何かと訪れたく思うようになりました。昨年は祖父と散歩帰りにいつも立ち寄った安倍川もちの元祖「石部屋(せきべや)」で好物の「からみもち」を食し、全国誌でも取り上げられている評判のフレンチ「カワサキ」に出かけました。  そんな筆者には静岡に積年の訪れたい場所があったのです。それは、2005年に公開された犬童一心監督の映画『メゾン・ド・ヒミコ』の舞台となった建物でした。映画では三浦半島の某所にある海辺のラブホテルを改装したゲイの老人ホームという設定でした。しかし実際は、御前崎市にある「カフェ・ウエルカムティ」というカフェでその後、カフェは閉店。売りに出されるも買い手がつかず、建物のそのままらしいとのこと。  この映画、主演はオダギリ・ジョー。この時期、同じ年に鈴木清順監督の『オペレッタ狸御殿』でカンヌ映画祭に招かれるなど、八面六臂の活躍ぶり。翌年には筆者が最高のテレビドラマと考える『時効警察』が放映されることになります。『仮面ライダークウガ』の時はピンときませんでしたが、その直後に放映された『OLヴィジュアル系』(2001年)で金髪の御曹司の役で登場したのを見て、これはすごい俳優が出てきたと。早速、「美男論」の講義でも取り上げ、予想通り、大ブレイクした次第です。現在も変わらぬ美男ぶりで、筆者にとって「美男」を語る際、欠かすこと出来ない人物です。  ところが、2005年のはじめ、筆者は生死の境を彷徨う大病を患いました。生まれて初めての入院は二か月に及び、面会謝絶になった時期もあり、ずっと個室で過ごしました。何とか九死に一生を得て現在に至っていますが、定期的に通院治療を続けています。『メゾン・ド・ヒミコ』はオダギリ・ジョー演じる春彦の年上の恋人ヒミコ(田中泯)の死とヒミコの娘、沙織(柴咲コウ)との新たな愛をゲイの老人ホームを舞台に描いた作品で、筆者は入院中、自分もここで死に、この映画を観ることは出来ないのではないかという思いにかられ、退院後も予後が芳しくなく、五年生きられれば良い方だろうと思っていましたので、いざ公開となった時にも、映画館に出かける元気がなく逡巡していました。そんな折、研究者仲間の一人が業界の方を通じて、配給会社の試写室での試写会の招待券を下さったのです。人数の少ない場所での鑑賞はありがたかった。オダギリ・ジョーが素敵だったのはもちろんでしたが、何より「メゾン・ド・ヒミコ」の建物とその周辺の風景が美しく、心打たれました。どうしても一度、その場所を訪れてみたい。そう思いながら、気づくと十五年も過ぎてしまっていたのです。  そして、この五月、再び「カワサキ」に出かけることになり、今度こそはと御前崎まで足を伸ばすことにしました。車を出してくれる友人がいて、何処でも連れて行ってくれると言ってくれたので。あいにくの雨模様でしたが、静岡市から意外に近く、高速を使えば一時間ほどで着くことが出来ました。田舎の国道を途中で左折し、農道を突当りまで行くと海沿いの道に出ました。それを灯台に向かって進んでいくと「カフェ・ウエルカムティ」はその姿を今も残していたのです。人の住んでいる気配はないものの、表札が出ていましたのでどなたかが購入され、建物を残されているのではないか、と。本当にすぐ目の前が海で、しかも、外海ですので、風と波の音が響き渡っていました。こんなにも簡単に十五年の思いが遂げられてしまうものかと、いや、この十五年には意味があり、ここで来なければきっと一生この光景を見ることはないだろうと。そして、今度は晴れた日にまた来ようと誓ったのでした。  さらに先の病で十五年、会うことのなかった人物にお目にかかることが出来たのです。2002年に大江戸線が開通したばかりの牛込柳町に「ル・デッサン」というフレンチが開店しました。シェフご夫妻の人柄の良さと、美味しい料理で評判の店となり、筆者も通うようになりました。そして、2004年11月、筆者のバースデーのお祝いを「ル・デッサン」で行わせていただいたのです。ところがその直後、病に倒れ、その後も外出を極力控えないといけない状態が続きましたので、疎遠になってしまったのです。そして、気づくと店を畳まれて、ご実家のある島田市に戻られたとのこと。ところが、「カワサキ」の河崎シェフが〆に出されるラーメンが「ル・デッサン」直伝と聞き、まさか増田シェフの「ル・デッサン」ですかと尋ねると、島田で行列のできる人気のラーメン店とのこと。昨年は行きそびれてしまいましたので、今回こそはと島田市民皆さまの日課の「朝ラー」で行かせていただきました。何せ、7時開店、13時半閉店の店とのことでしたので。  十五年ぶりに増田シェフご夫妻の姿を目にしたとき、思わず涙が出そうになりました。オダギリ・ジョーではありませんが、変わっていないのです。店こそラーメン店になっているものの、牛込柳町のときと同じ空気が感じられました。何故か自分だけが年老いて、映画のヒミコに向かって一直線。  静岡から戻ると、大学からカリキュラム改正のため、次年度より「美男論」の授業は廃止になるとの通知が。思えば、1994年から二十七年間もよく続けてこられたなあ、と。「嵐」も活動休止となり、ここらが潮時なのかもしれません。  残された時間、筆者に課されたのはこの『美食通信』も含め、「書くこと」ではないかと確信した次第です。いにしえの拙論で、若くしてエイズで亡くなったフランスの作家、エルヴェ・ギベールの「僕にとっては書くことが生きることなのだ」を引用して、「書き続けること。その結末がどうであっても。書くことが死に絡めとられるのではなく、死を絡めとってしまうまでに」と結論付けたように(「死の量化作業」、初出1993年。拙著『美男論序説』、1996年所収)。 今月のお薦めワイン  「イタリアのシャンパーニュ、フランチャコルタ」 「フランチャコルタ ブリュト クリュ ペルデュ NV  カステッロ・ボノミ」 6500円(税抜)  お薦めワインは6回でワンクールを想定しています。ツークール目はその応用編ということで今回からツークール目。その初回ということはシャンパーニュの応用で、イタリアのフランチャコルタを紹介させていただきます。イタリアで広く飲まれているスプマンテ(スパークリング)は、ヴェネト州の「プロセッコ」、ピエモンテ州の「アスティ」あたりでしょうか。しかし、イタリアにはシャンパーニュとそっくり同じ造りのスプマンテがあります。それがロンバルディア州の「フランチャコルタ」です。ロンバルディアと言われてもピンとこないかもしれませんが、州都がミラノだと言われれば親近感が出てくるのでは。 シャンパーニュとそっくり同じというのは、製法が瓶熟のシャンパーニュ方式というだけではなく、セパージュもピノ・ネロ(ピノ・ノワール)、シャルドネ、ピノ・ビアンコ(ピノ・ブラン)とピノ・ムニエとピノ・ブランが違うくらいであとは同じ。今日、ご紹介するボノミのクリュ・ペルデュはシャルドネ70%、ピノ・ネロ30%ですので、シャンパーニュでもあり得るセパージュ。ちなみに、造りがシャンパーニュ方式でリーズナブルなスペインの「カヴァ」は葡萄がマカベオやチャレロといったスペインの品種。ですので、フランチャコルタを飲めば、シャンパーニュとの純粋にテロワールの違いを楽しめるというわけ。また、イタリア料理店に行かれた際、フランチャコルタを頼まれれば、ワインに詳しいと思われるに違いありません。ボノミはフランチャコルタ唯一のシャトーワイナリーで、最低でも規定の倍以上(36か月)の瓶熟を行なうことでリッチなフランチャコルタを生産しています。この「クリュ・ペルデュ」はボノミの顔ともいえる人気のキュヴェ。シャンパーニュとの違いをご堪能あれ! ご紹介のワインについてのお問い合わせは株式会社AVICOまで  略歴関 修(せき・おさむ) 一九六一年、東京生まれ。現在、明治大学他非常勤講師。専門は現代フランス思想、文化論。(一社)リーファーワイン協会理事。著書に『美男論序説』(夏目書房)、『隣の嵐くん』(サイゾー)など、翻訳にオクサラ『フーコーをどう読むか』(新泉社)、ピュドロフスキ『ピュドロさん、美食批評家はいったい何の役に立つんですか?』(新泉社)など多数。関修FACE BOOOK関修公式HP

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LEATER BESPOKE

LEATER BESPOKE

The Cloakroom でクラシックなスーツに次いで人気の高いメニューであるレザーのフルオーダー。 他ではなかなか実現できないハイクオリティなラムレザーを使用して、テーラードジャケットからブルゾン、ボンバージャケット、コートなど様々なアイテムをフルオーダーでお仕立てします。    ハンドメイドで仕立てる至高のレザービスポーク、是非ご堪能ください。   価格¥275,000から 出来上がりまで1.5ヶ月から2ヶ月程度    ご不明な点はメッセンジャーもしくはコンタクトからお気軽にお問い合わせください。  サロンのご予約はこちらから 商品ページはこちらから

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「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第8回

「酒番日記」 映画、音楽、本、時々酒、のこと 第8回

1989年6月 渋谷スクランブル交差点 交差するたくさんの人波に3回やり過ごす信号 初めての東京渋谷 初めての人々との初めての仕事 今にも逃げ帰りたい日々を救ってくれたのは 街の至るところにある公園   整然と並ばされた木々の新緑が揺れる風の公園 コンクリート堤防を流れる川がたゆたう水の公園 波の立たない作られた海浜の暑すぎる砂の公園 運ばれてきた土と作られた木で出来たベンチが濡れる雨の公園 煙りが漂い大人が潜む子供のいない児童遊園   都会だからこその公園、街中の広場 行き場のない人や休息を求める人々が集う公の居場所、留まっていられる自由な場所   そもそも明治維新の熱冷めやらぬ江戸から東京へと変貌していくさなか 明治6年に布告された法律に基づく公園制度によるとか そのころの文言には「都市の肺臓」たるべし衛星環境のための公共の広場が云々とか PARKなのか GARDENなのか PUBRIC SPASEなのかはさておき公の広場として 地方大名江戸屋敷の広大な敷地跡や寺社の持ち物の土地を借り受けて整備したとか   2021年6月 数寄屋橋スクランブル交差点 誰よりも前で、誰よりも早くわたりきり、陽光きらめく日比谷公園に向かう 明治36年完成のこの公園 東京初の公共図書館、東京で初めてフランス料理を提供したレストラン、東京で初めての結婚式場 一般民衆がはじめて耳にする西洋音楽の舞台  ...

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